Restart

視点:新人くん

プロローグ

 冷たい牢屋から出た時、すべてを失った。季節なんてわからなかった、時間の流れを知るすべをとうに失われていたから。無力さを噛みしめることしかできずうまく息が吸えない。胸が痛い、頭がどうにかなってしまいそうだ。重力に逆らう体力はもはやなかった。今にも地面にひれ伏してしまいそうだった。思考は停止していた。

体を二人がかりで支えてもらった時、久しぶりに他人の優しさに触れた。いつ以来だ家族以外の人と会ったのは、新鮮さと悔しさ色んな感情が綯交ぜになって嗚咽が漏れた。こんなにも気をかけてくれる、人間らしさを取り戻した感じがした。

 

  


 

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