第18話
「欄先輩、これどうします」
「どうって言われましても」
意味もないやり取りだ、感情らしいものを見たことがない。この上司はよくわからない。
「一応上司ですよね? これ判断してもらわないと困るんすけど」
「じゃあ祓ってよ」
「無責任な大人って感じっすね」
何度目かの実習がこれじゃあな。トラックから降りて現地でこの対応。
「知ってますよね、ぼく宅配だけですから」
「仕方ない、怪異に怪異ぶつけんのかぁ」
「そういう指示で案件でしょうが」
「志野くんだっけ? 私の言うこと、この怪異さん聞いてくれると思う一応神様系だよね?」
「志野大樹ですって! 聞くか聞かないかなんて知りませんよ。やれって命令でしょう」
「私も命は惜しいんですよね。志野くんは死んだことあるじゃないですか」
至極当然とでも言う感じでそう言った。
「あれは死んだんじゃなくて司の空蝉の能力で死んだふりですってば」
「そうだっけ? 君んとこ神様の血筋でしょ」
「それとこれとは別問題だから!」
「しゃあないなぁ、後ろ開けて」
「了解」
後ろのトランクを開けて離れる。巻き込まれたくない。
「よっこらせっとなぁ」
中に手を入れていくのが見える。腕がペキペキと折れる。痛みなどまるでないかのように箱を手で取り出すと玄関を開け投げ入れ。
ふせる。
無数の何かが家の中で音を立てていく。ガラスが割れて飛来する。特注の御札を家の玄関側の辺りに何枚も貼っていく。
前もって描かれてあった模様の上に楔を打った。
「さぁ行こう」
車へと駆け出し乗り込むと同時に家が暴発した。
「先輩あれ、どうなるんっすかね」
「そりゃあ、事後処理という隠蔽だろうね」
「おっかないですね」
「同意見。」
トラックで元へと帰る。気分転換に適当な音楽を流す。
彼女は左を向き外を眺めていた。
「それ、痛く無いんですか?」
「痛いよ、作業の少し前に痛み止めを先に飲んでるけど。クソ痛い」
一瞬こちらを見て元の方へ視線を戻す。
「大丈夫です?」
「だいじょばない。まぁ我慢するしかないわなぁ」
「先輩、ヤバいです」
車内を叩く音が響いてくる
「さい、ですか」
ダッシュボードの上から紙束を数枚彼女は手に取るとそれに火をつけた。
「ちょっとそこ停めてね、上に登ってくるわ」
助手席の窓を全開の状態で上がるのが見えた。
紙束の数枚がトラックの周りに落下するのと同時に火が消えた。ごとごと音がして窓から降りて戻ってきた。
「さて終わったみたいだね。それちょうだい」
ポケットのタバコを指さしてきた。ので手渡すとライターで火をつけて吸い始めた。
「先輩タバコ吸うんですね」
「さて、どうだったかな」
彼女は深くため息を吐いて、タバコの煙をくゆらせる。
「ところで志野くん。君さぁ未成年なのにタバコは吸うわ運転するわで犯罪のオンパレードだな」
「あっ、バレました?」
思わず噎せた。
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