第14話

鼻声を隠すため「ううん」と、単調に答える。


それから瞬も足を崩した。



あれの後となっては非常に気まずい。


微妙な空気もいたたまれなくなる。




「あのさ」


もしかして別れ話…なんてチラつく。


「さっきはごめん」


"ごめん"は私を拒んだ"ごめん"。


やっぱりそうなのか…と、視界がボヤける。




「ちゃんと…話すから」


もしかしてが本当になるかもしれない。



「今日…正直すげー嬉しかった」



見当はずれな瞬の言葉に、私は固まる。


「え…」


掠れた声はなんとも情けなかった。


「でも俺ん中で色々葛藤があって」


瞬は決まり悪そうに「ここで手出しちゃダメだって」と続けた。



頭が混乱して付いていけない。


ただ瞬も一生懸命何かを伝えようとしてくれていて、私は耳を傾けた。




「修学旅行ん時あったじゃん」


私は無言で首を縦に振る。


「あん時….俺、菜緒のこと傷付けたから」


目線を下へ落とし、「バカって言われたし」と呟いた。



こんなに小さく見える瞬は初めてだった。


あの時の事はもう怒ってない。


むしろ今となれば戻りたい。




「だから…不安にさせてたらごめん」



体育会系だからなのか「俺ちゃんとしねーといけねーから」と、膝に手を付き頭を下げた。

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