第15話

それだけで全てを悟った。



「どうして?」



確かな言葉が欲しくて。


つい意地悪に問い掛けてみた。




微かに頰を赤くした瞬が、瞳を上げる。



「菜緒を大事にしてーからに決まってんだろ」




その言葉が何よりも私を安心させた。


瞬はこういう人だった。


ちゃんと私の事を考えてくれている。


私は瞬の事を何も考えていなかった。


自分の事ばっかりだ。




「うお!なんで泣くんだよ!!」


安心しきった私に瞬はびっくりする。


「だって別れると思ったもん…」


「んなわけねーだろ」


優しく微笑み、「ほら」と瞬はこっちに来いと言うように両腕を広げた。


「いーの?」


「ほら早く」


叫びたいほど嬉しい気持ちを抑え、瞬へ飛びつこうとする。


「あれ?」


でも、「瞬…」と動きを止めた。


「あ?」


「足…痺れて動けない…」


ずっと正座をしていたからだろう。


痺れている事すら気付かなかった。



「なにやってんだよ」


瞬が声を出して笑う。


間抜けな私に瞬の方から近付いた。


大好きな腕に包まれる。


ずっと不安だった感情が一気に溶けていった。

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