第8話

「何やってんだか…」


流しに手を付き、うなだれる。



いつもと変わらない瞬の様子。


対する私は意識しまくってこの状態。


瞬は何も思わないのだろうか。


その差に落ち込んでしまう。




冷蔵庫を開けると「あれ?」と、いつもの場所にお茶が入っていなかった。


切らしているのかとお茶っ葉を探すも見当たらない。


「あれーどこだろ。場所変わったのかな」


ガサゴソと棚辺りを探していると、「菜緒?」と瞬が顔を出した。


「中々来ねーから」


「ねーお茶っ葉の場所って変わった?」


「ねーの?」


「いつもの場所になくて」


一緒に瞬も探してくれる。


私より背の高い瞬が、流しの上の棚へ手をやり「あるじゃん」とすぐに見つけた。


「わ!そんなとこ絶対わかんないよ!」


おばさんも背が高い方でおそらくここの場所の方が勝手が良いのだろう。


「菜緒はチビだかんなー」


意地悪く瞬は笑う。


その笑顔が私にキュンとさせるには一発だった。




今は瞬と2人っきり。


不意に千佳の"こっちから攻めな!!"の助言が脳裏を過る。


千佳に変に後押しされたのか。



「ほら」


と、お茶っ葉をすんなり手に取る瞬に私は腕を伸ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る