第2話 冒険者アカウント登録
21XX年。
日本は大ダンジョン時代へと突入した。
そもそもダンジョンは何かというと、百年前に日本の至る所に現れた巨大な建造物で、モンスターを討伐したり、お宝を得たり出来る面白い場所である。当時は危険とされていたダンジョンだが、冒険者の目まぐるしい活躍により、今では娯楽の一部として数えられている。
ダンジョン内には数々のお宝が眠っており、人々が一攫千金を夢見て、探索や強敵との戦いを繰り広げている状況だ。ダンジョン配信で人気の配信者となれれば広告収入も入るようになり、一気に富豪へと成り上がることも可能である。
そんな空前絶後のダンジョンブームに乗り遅れた俺こと
「ダンジョンとか興味なかったけど、とりあえず新規登録だけでもしてみるかな」
冒険者としての活動を希望する人間は、冒険者ギルドと呼ばれる特別な施設で新規契約を行う必要がある。自分自身の『冒険者アカウント』をデータベース上に登録することで、初めてダンジョン探索へと乗り出すことが可能となるのだ。
◆◆◆
———渋谷区冒険者ギルド受付。
『冒険者ギルドへようこそ!』
「新規で冒険者登録したいのですが」
『かしこまりました。まずは、ご希望のジョブを選択してください』
冒険者ジョブ一覧表を見せてもらうと、そこには千種類を超えるジョブ名が表示されていた。
「こ、この中から選ぶんですか?」
『そうですよ。新規登録を行うにあたり、必ず選択して頂く必要がございます。自分の好みにあったジョブを選択してくださいね』
下にスライドさせるのも面倒になるほど種類が多すぎるもんで、俺は段々飽きていた。強そうなジョブでも適当に選んでおけば何とかなるだろう。
「うーん、うーん、うーん、どれにしよっかな〜〜……………………あっ、ミスった」
『お客様、随分と変わったジョブを選ばれましたね。私共でも見たことがないジョブですよ』
「やべ、スライドさせまくってたら変なジョブ選択してた」
『一度選択したらやり直しは出来かねます。それでは、良い冒険の旅になることを心よりお祈りしております。行ってらっしゃい』
【冒険者アカウント】≪タツロー≫
【レベル】≪1≫
【ジョブ】≪略奪者≫
【所持金】≪5000G≫
【チャンネル登録者数】≪0≫
【基本スキル】≪配信≫
【攻撃スキル】≪パンチ≫
【固有スキル】≪強奪≫
【奪ったアカウント】≪なし≫
(うわぁぁぁぁぁぁあ、ミスポチしたら変なジョブ選んじゃったよ! 何なの略奪者って。百パーセントまともなジョブじゃないし、攻撃スキルパンチって不良の喧嘩じゃあるまいし……上の方にある剣士とか弓術士にしとけばよかったよ……)
「はぁ、配信ねぇ……【METUBE】って動画投稿アプリで乱立してる
選択したジョブに関わらず、冒険者全員が初期状態から所持しているスキルが『配信』だ。冒険者は自由にダンジョン活動の様子を撮影でき、世の中に冒険者の良さを広めるため常設された基本スキルである。配信をONにすることで、撮影用ドローンが自動で追尾するシステムで、誰でも容易にダンジョン配信が出来るわけだ。
「ここから近い冒険者専用のお試しダンジョンがあるから早速行ってみよう」
◆◆◆
渋谷区冒険者ギルドの隣に位置する、比較的小さいタイプのダンジョンに移動してきた。冒険者の登竜門的な位置付けのダンジョンであり、序盤でレベル上げを行うのに適している。
【ドローン配信】≪ON≫
【同接】≪4≫
(物珍しさで若干見に来てくれてる人がいるくらいか。まっ、最初はこんなもんだろ)
「新しくダンジョン冒険者を始めたタツローなんだけど、これから配信頑張ってくんでよろしくな!! まずは目の前の【スライム】を倒しにいくから、みんな応援頼んだぜ!!」
“がんば!!”
“気を付けてね”
リスナーが四名しかいないから少々寂しい気もするが……徐々に増やしていくしかないか。まずはスライムに攻撃スキル『パンチ』をお見舞いしてやろう。
「うりゃぁっ!!!」
『……』
「おりゃぁっ、このっ、パンチパンチ……!!」
『……』
【同接】≪0≫
(超弱いじゃん略奪者!! なんかスライムネバネバしてるから、パンチ放っても全然効いてないし全く倒せる気がしないんだけど!! 魔法の一つくらい使わせろよ!!)
あまりの弱さとつまらなさにリスナーは逃げるように去っていき、人気配信者となることの難しさを身に染みて感じていた。
(残るは固有スキル強奪か。だけど説明を見る限りじゃモンスターには使えなさそうだけど……)
【強奪】≪冒険者のアカウント情報を奪い取る≫
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