人気美少女配信者が引退したので、裏スキル『強奪』を使いアカウントを奪って無双配信する話
柊
第1話 美少女配信者の引退
私の名前は
数年前からダンジョン配信を続けている冒険者です。中学校一年生から親の許可を得てダンジョンに潜り始め、現在は高校二年の年齢になっている。
配信を始めたばかりの頃は本当に大変で辛い思いもたくさんしてきた。ステータスも低いし、スキルもないし、魔法もないし、敵は強いしで全くお話にならない状態だった。
セーブを忘れて視聴者をゲンナリさせたことで同接が一気に減ったり、チャンネル登録を解除されたりと、初心者感丸出しの状態。最初はチャンネル登録者数も当然ゼロで、同接人数はたったの五人とか十人。私って何でこんな大変な思いをしてまで冒険者やってるんだろう、などと毎日悩んでいた時期もありました。ダンジョン配信は非常に人気のジャンルなので、底辺配信者が上位に上がってくるのは稀な話なのです。
そんなダメダメな私でしたが、顔面ステータスはそれなりに自身があったので、ダンジョンというよりは、私目的で見にきてくれる人が多かった。残してくれるコメントも、可愛いとか、綺麗だねとか、ヤラせてよとか、そんな内容ばっかりで……私は女なので嬉しいっちゃ嬉しいけど、やっぱり冒険者としての評価の方が欲しいというのが正直なところです。
私は毎日ダンジョンに潜って努力を続けた。
毎日毎日モンスターに立ち向かい、討伐を重ねて戦力を上げていった。
そんな努力の甲斐もあり、徐々に冒険者としての実力が認められ、チャンネル登録者数が一千人に到達した時は感動で大泣きしてしまった恥ずかしい記憶が思い出されます。気付けば一千人から一万人、十万人と増えていき、最終的にはチャンネル登録者数が三百万人を突破しました。
私にとってダンジョンは生きる意味そのもので、皆さんの応援があったからこそ、ここまでやってこれた。
来年は大学受験のシーズンに突入するので、ダンジョンには潜れなくなると思います。強敵を相手にする時間や攻略の作戦を考える余裕がなくなり、私の勇姿をお見せできそうにない……悲しいです。
以上の事から、大変急で申し訳ないのですが、本日の配信をもってダンジョン活動に終止符を打とうと思います。
ダンジョン冒険者引退です——————。
◆◆◆
【ドローン配信ON】
【チャンネル登録者数:3000569人】
【同接:465360人】
【いいね:9706001件】
コメント:
“今日も頑張ってねメグルちゃん!!”
“メグルんマジ天使”
“最近この子の配信見始めたけど、強さと美貌を兼ね備えてるの凄い”
“メグルならこの階層も余裕だろ”
“今日の配信楽しみにしてたんだ♪”
“金髪似合い過ぎでしょ”
“お前ら欲情し過ぎwwwwww”
(今日もこんなにたくさんの人が見てくれてる。みんなの期待に答えないと)
◆◆◆
東京のとあるダンジョンにて。
『覚悟しなさい!! 今まで積み上げてきた努力の成果を見せてあげるわ!』
「ギシャァァァァァっっっ!!!!」
数あるダンジョンの中でも高難易度として位置付けられている、東京迷宮スカイツリーの八十四階に到着した。ここにはマグマの胃液を放出する|フレア《《》》|ドラゴン《《》》が生息しており、数々の冒険者を返り討ちにしてきた難関階層と言われている。
フレアドラゴンの口内から吐き出される灼熱の炎は、鉄をも溶かすほどの高熱であり、人間が直接喰らえば人溜まりもないだろう。背中に生えた翼からは絶え間なく炎が燃え盛り、高速で飛び回っているにも関わらず消えることがない。
研ぎ澄まされた刃の如し爪と尻尾で、冒険者達を切り刻み薙ぎ払っていくドラゴン。ダンジョン冒険者の中でも、熟練の戦士でなければ討伐が難しいとされる、極めて強力なモンスターだ。
『みんなの応援が私の糧となる。だから、力を貸して!!』
≪同接:515389人≫
“マジ応援してっから!!”
“メグるんは俺の嫁”
“ここのドラゴンかなり強いから油断だけはするなよ”
“私全力で応援するから!!!”
“いつも通り冷静にな”
(みんなありがとう。今日は私の集大成。全力で最後の戦いに挑もう)
フレアドラゴンの弱点は水。翼の炎を最初に狙い、動きを鈍らすことができれば戦況は有利に傾くでしょう。
『やぁっ!!』
「ギシャァァァァァっ!??』
少々翼を掠めた程度で、まだまだ素早い動きは健在です。もっとしっかりと狙いを定め、正確に翼を射止める必要があります。
フレアドラゴンが口内に火炎を貯めている。強力なブレスがこちらに向かって飛んできそう……急いで守りの体勢に入らなければいけない。
『私を守って!!』
フレアドラゴンが大きく口を開くと同時に、灼熱のブレスを吐き散らかしてきた。水は炎に対して有利に作用するので、水の盾を作って相殺することに成功する。
私は片手でブレスを防ぎつつ、もう片方の手を使って新たな魔法を発動しました。
『これでも喰らいなさい!! えぃやぁっ!!』
両手を駆使しての二段構え。ドラゴンは火を吐き続けて防御がおざなりになっているので、私の放った水のビームを避けることができない。燃え盛る厄介な翼の炎は消え、敵は移動が不安定な状態に陥っていた。
『いける!! はぁぁぁぁぁあ!!』
怯んでいるドラゴンの口内に、直接水の爆弾を打ち込んだ。残り数秒もしない内に体内で水蒸気爆発が起こるでしょう。
『ドッカーン……!!!!!!』
『グルルっっっ……グルっ……』
(やったよ、みんな……これでもう思い残す事は何もない)
◆◆◆
こうして私の長き戦いは終わりを迎えた。
(敢えて配信での引退宣言はしません。密かに消えていきたいと思います。皆様、本当に長い間お世話になりました。アタシの活躍を見て下さった全ての方に感謝致します。ありがとうございました)
【ドローン配信OFF】
“おめでと〜〜〜!!”
“また期待してるよ”
“次の配信予定ないけどいつになるの?”
“これからもずっ友だよ♪”
“たまにはプライベートの動画もお願いします”
“次も楽しみに待ってます!!!”
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