第2話
軽い自己紹介をした。
私の性別は女性ということ、そしてあなたと当たり前だが同じ年ということを話した。
一つ嘘をついてしまった。
ずっとスマホの中から見ていたと言ったがたがそれは嘘だ。
私は一か月前にスマホの中に入ってきたのだ。
ただ死ぬ前は君の一番親しい人として君の隣にいたのは間違いない。
私はなぜかスマホの中に閉じこめられていて、出ることは出来ない。
私の楽しみは、あなたのスマホからあなたの人生を見ること。
あなたの人生を妨害するようなことは絶対しないということ、また充電が減るとお腹が空くことや水が怖いことを説明した。
青は正直かなり自分の身に起きたことに驚いていると思う。
正直、スマホの中に、勝手に人がいるということは現実的ではない。
ただ青はスマホを買い替えることはせずに、私の入っているスマホを使い続けてくれた。
充電も八〇%を切らないようにモバイルバッテリーを使って使用してくれており、水場にもスマホをもっていくのを控えてくれている。
優しい人なのか、疑わない人なのか関心する。
数日後、青からコンタクトがあった。
「俺のこと知っているって、言っていましたよね?」
私は返事を送った。
「俺が中学校の時一番先生に怒られた話はなんだと思います?」
唐突に質問が送られていた。
私は一瞬過去を遡った、だがすぐに返信を送信した。
「前の友達のカズ君に輪ゴムを飛ばそうとしたら間違って黒田先生の顔に輪ゴムが当たって怒られたことですよね?」
スマホが開かれて既読がついた。
これは青の身近な人しか知らないはずだ、おそらく驚いて声が出ないのだろう。
数分後に返信が来た。
「正直びっくりしています。そんなことまで知っているとは思いませんでした。」
この言葉を聞いて嬉しくなった私は嬉しくなって次々と青の私が知っている情報を流した。
「他にも、首元に三角形のほくろがありますよね。後、実はカレーがアレルギーで小学校六年生になってから食べてないこと、酪農実習で五日間風呂に入らなったことも知っています!」
つい青の反応が嬉しくなって、どんどん送ってしまった。
焦って送信取り消ししようと思ったが、青は画面を開いて確認していた。
私は椅子のスマホに顔をうずめてつい調子になってしまったことを後悔した。
「このこと全部知っているのは俺の知っている限り一人だけです」
「もしかして加奈?」
心臓がドキリとした
私のことを引きずってほしくない。
ただ自分を俯瞰した。
この状況で返信が遅れては怪しい。
私はいつもと同じような時間で返信を送った。
「違います。」
「そんなわけないですよね。」
正体がばれなくてよかった気持ちと、本当にこれでいいのか自分で自分を少し疑った。
少しずつ、青は心をスマホの中の住人に開いてくれるようになった。
朝はおはようのラインを必ず打ち込んでくれたり。
「何しているのですか??」
「暇ですか?」
などこちらに心配をしてくれた。
青の位置情報は相変わらず、学校に一回も向かっていないが、青が少しずつ、元気になってくれて嬉しかった。
ある日、私からコンタクトを取ってみた。
「青さんは学校行かないんですか?」
「行きません。」
「理由を聞いてもいいですか?」
「行く意味を失ってしまいまして。」
「大切な人を失って、目標というか夢がなくなってしまいました。」
私はとても悲しい気持ちになった。
「それは辛かったですね」
「あなたの夢や目標知っていますよ。大切な人にあなたの書いた小説を読んでもらうことですよね?なら私が大切な人だったら小説書くの頑張ってほしいと思いますけどね」
「少し、自分と向き合う時間が欲しいです。」
私は彼をゆっくり待った。
※
時間が物事を解決してくれるというとこは正しいと思う。
青は一年間休学した後に高校へ再び通い始めた。
私はとても嬉しかった。
話を聞くとあれ以来、小説は書いてないみたいだ。
ただ、いつか再び書けるようになった時のために大学は文学部に行きたいそうだ。
そのために受験勉強に気合を入れた現在取り組んでいる。
私は応援した青がまた目標を見つけてくれて嬉しかった。
そして大学に合格して二人で祝福をした
そんな私の役割はというと青が絶対に学校へ遅刻しないようにおはようのラインを送信することだ。
私のおかげで青は一回も学校へは遅刻してない。
この関係はずっと続くと思っていた。
ただ最近、青は近くの森林公園にたまに友達と行くようになった。
理由を聞いてもはぐらかせるし、スマホに何も記録が残っていない。
今思えばこの時から異変は少し起きていた。
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