第5話 分岐点
両親に会いに来たのは私たちが最初な様で、10分後には父の両親、その数分後には父の姉とその娘が来た。30分もすれば母や父の親友や友人が集まってきた。皆涙を流していたり、涙を堪えていたり、泣いていないが眼が充血していたり。私一人なんの感情もなくただ立ち尽くしているのが気まずいくらい。そのうち私はなぜ泣けないのだろうと考えたがすぐに、泣くほどの関係性を築いていなかったからだろうと、結論が出たが考え続けた。普通は、ここまで私を育てて同じ屋根の下で暮らしてきた、人物が死んだというのなら涙の一滴や二滴出てもいいのではないか。そんなことを考えても涙が出るどころか目は乾燥している。私だけ泣いていないとばれるのは何故か嫌なため、数分に一度ハンカチで涙を拭うふりをした。親友や友人は死んだ両親に向かって
「今まで、ありがとう」
や
「お疲れ様。」
と声をかけていた。両親の親たちは死体の手を握って泣いていた。一時間もすれば皆少しずつ帰っていった。すでに親族しかいない空間で
「淡実ちゃん、これから私たちはいろいろしなきゃいけない事があるから、一人で帰れるかい?」
おばあちゃんの問いかけに
「うん」
と返事をし、おばあちゃんは私にお金を渡した。
「これで晩御飯も一緒にかいなされ」
「うん、じゃあまた後で」
おばあちゃんにそう言った後
「先、失礼します。」
と言いながら会釈してドアを開けた。病院の外に出てスマホで最寄り駅を検索してそこからは何事もなく帰ることが出来た。家に入ると真っ先にリビングへ向かい途中スーパーで買った、お弁当をテーブルへ置いた。手を洗い、またリビングへ戻るとテレビをつけた。テレビを自分でつけるのも、もう半年以上していないだろう。
帰り道で決めたのだが何も感じなかったことに対して、もう悩むのをやめることにした。悩んだところで何も変わりはしない。
テレビの食レポシーンを見ながら、のり弁を食べ進めた。何故かはわからないが味が薄く感じた。
食べ終え、テレビを消しパッパとお風呂に入った。今日は疲れた寝る間際に思ったことは、これだけだった。
明日は何事もなく一日が経てばいいな...。そんなことを心では思っていただろう。だが、そんな希望は儚く......。
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