第3話 バス
私はベンチに腰掛けた。遊ぶ約束をしていたと言っても公園で待ち合わせ程度しか計画を立てていなかったので、まず何をするか決めようと声をかけた。
「今日どこ行く?」
「そうだなぁショッピングモール行かない?」
「じゃっそうしよう」
体を少しのけぞらせてから、ベンチから立った。
「よし、行こうか
その呼びかけに軟風子は白いショルダーバックに丁寧にスマホを入れ、立ち上がった。
「どこのショッピングモール行く?」
「パックスモールとか行く?そこまで遠い訳でもないし」
「そうしよっか」
私は頷きながら言った。そこからバス停のほうへ歩き始めた。バス停に着くまでたわいのない会話で談笑していた。バス停まで徒歩15分で着く距離だ。こうやって軟風子と隣に並んで会話をするのをもう二ヶ月はしていないだろう。
軟風子とは小学校からの付き合いで、高校は別の高校へ通っている。中学までは頻繁に遊んだものだが、高校生になって部活やそれぞれの友人関係があって、話すことすら少なくなっていた。それぞれの友人関係と言っても私は、友達が少ないのだが…。
私たちはバスの時刻表で次に来るバスの時間を確認していた。
「え~っと次に来るバスは...20分だって!」
軟風子が指をさし、確認してそういった。私はスマホで時間を確認した。
「今が18分だからあと2分もしたらバスがくるね」
「これを逃したらあと20分はまたないとだったからよかったね」
「うんっ」
そう返事をした。
バスは丁度20分についた。私も軟風子も交通系ICカードを使って乗車した。バスはほとんどの席は取られていたが、後ろから2番目の席が二席とも空いていた。バスに乗ってからの会話はなかった。ショッピングモールの最寄りバス停までだいたい20分かかる。乗車してから5分で軟風子は眠っていた小学生のころからバスに乗るときはすぐに寝てしまう様だ。不思議なもので親の車や電車などでは全然寝なく、なぜかバスに乗っているときだけ、眠くなるらしい。背もたれに後頭部につけて寝ている彼女を見てどこから見ても様になっていると思うそれと一緒に自分を比較して少し落ち込むのがいつもの流れだ。
「本日はご乗車、ありがとうございます。次は~パックスモール
アナウンスが流れ、軟風子は目を覚ました。声を出さずにあくびをして、肩を回した。バスが停車し、席を立った。他の乗客も4人席を立ち、スムーズに全員下車した。コンクリートの地面に足を着け
「やっと着いた~!」
と伸びをして言った。
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