第5話 見なければ良かった。
お見舞いに行った時の妙な体験、私もしてるんだよね。
叔父が入院して、ちょっとした手術をした後。経過は良好だって父が言うし、一度見舞いに行こうって言うから、出かけたんだよ。穏やかな話しやすい叔父でね、私も好きだから即答したわ。
海に面した、大きくて新しい病院だったなあ。院内にちょっとしたカフェなんかあって、明るくて。こんな病院なら叔父さんも良かったなあって思いながら、病室入ったんだけどね。叔父さんはパジャマ姿でベッドで半身起こしてた。
「………?」
叔父さん、妙なお面を被ってたんだよ。なんて言うのかな、干からびた髑髏みたいなさ。うわって思ったよ。でも直ぐパーティーグッズだろうって考え直して、穏やかで真面目な叔父がなんでこんなことするんだろうって、顔を見直したんだ。
いつもの顔なんだよ。
髑髏のお面なんか被ってない。そんなのどこにもない。
私と父にも丁寧に挨拶してくれた。ただ、
「もうすっかり良くなりましたので……」
「皆様にご心配おかけしましたので……」
「退院致しましたら先ず……」
そんなことを、妙に力を込めて繰り返すんだ。傍ではいつもおしゃべりな叔母が、複雑そうな顔してた。よく見たら叔父の顔が結構やつれてて、あの髑髏のお面が無理して喋ってるみたいで。怖いより気の毒だったから、あまり叔父を刺激しないようにしてた。
帰りの駅のホーム。父がぽつりと、
「叔父さん長くないんだ」
「……そうだろうね。やたら、良くなった、治ったって言ってられた割には………」
「やつれていられたよね」
叔父さん、それから割と直ぐに亡くなったよ。
……やっぱり死神とか、そういうの、……あるのかなあ……。
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