第6話 聞かなければ良かった。2

 自分、前にも言ったけど、怪談で卒論書くくらいの怖い話好き。学生時代、大学の紀要に怪談の論文を投稿したりしてた。書くのも話すのも好きなんだね。

 結婚してからは旦那が、

「妻はお化け屋さんなんだー」

 とか言うもんだから。夏になると「怪談話を一席お願いします」みたいに、色んな方面から頼まれたりする。

 その伝で知り合ったご夫婦からうかがった話なんだけどね。


 感じの良いご夫婦でね。穏やかなご主人に、明るくて可愛らしい感じの奥様という感じ。

 そのお二人が、ある有名な温泉に行った時の話。ある老舗旅館に投宿されたらしいんだけど、

「なーんか陰気なんですよ。宿のご主人も暗いし……」

 泊まり客もお二人だけのようで。それはそれでゆっくり出来ると思ったら。


 ドタドタドタドタドタドタドタドタッ。ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタタタタダダダダダダダダ……。


 ドタドタドタドタドタドタドタドタッ。ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ。ダンダンダンダンダンダンッ。


 真夜中頃だったか、上の階から凄まじい足音が聞こえたそうです。

「修学旅行生でも来ているのかと思ったんです。ただそれにしては姿を見なかったなあ……」

「でも一言欲しいよねって、宿のご主人にやんわり言おうかって話になって、その夜は休んだんですけど……」


 翌朝。

「昨夜は修学旅行生が……」

 言い終えぬうちに、宿のご主人は宿泊料を全額返金してきたそうです。そして身振りで何も言うなと。それきり。


「……帰宅してからインターネットとかで調べたんですけどね。別にいわくつきの宿でもなく……」

「………」

 

 もうこの時点で充分怖かったんですが。余計な気を起こして、何かフォローしようとしちゃったんです。


「でもそれって、座敷わらしみたいな何かじゃないですか?だとしたら縁起が良いですよ」


 途端、ご夫婦の様子が変わって。


「あれは、そんなもんじゃないです。そうだよね?」

「はい。座敷わらしではないです。あれは違います」

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