第4話 触れたくなかった。

 学生時代のクラスメイトと、たまたま会ったんだよ。リアルタイムではそんな仲良くなかったけど、なんか話に花が咲いてさ。そしたら彼女、

「うさ民さん、卒論怪談だったよね?」

「そだよ。何か聞かせてくれんの?」

「いやー…。聞きたいのよ……」

「あ?」


 彼女さ、最近彼氏が出来たらしいんだよ。彼氏は都内の小ぎれいなマンションで一人暮らしだって。家賃聞いてびっくりしたわ。破格。しかも、最上階に住む大家さん――人の良い昭和のオカンって感じの――が、何かにつけ良くしてくれるんだって。

 そんなある週末、彼女がマンションに泊まりに行ったんだって。夜になったら、やること一つだよね。私も旦那とするけどさ。あ、脱線したね。

 んでしてたら、彼氏が悲鳴あげたって。ヒッ、みたいな。見たら彼氏の指先が血で濡れてんの。でも二人とも怪我してないし、どこも痛くない。

 何気なく天井見上げたら、血がポタポタだって。

 夜明けまで二人抱き合って震えてたそう。


「……そりゃ災難だったね」

「そのマンションさ……」


「引きこもりだった大家の息子が飛び降り自殺したけど、部屋はどこか分かんないんだって」


「…どう思う?」

「あんたが思ってるのと同じことしか思ってないよ」


 クラスメイトとはそれから会ってないけど、今日も元気で幸せとはどうも思えないんだよね。殊に彼氏が。

 

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