揺れに揺れる駕籠の中で そう誓い、それから自分に言い聞かせた。
(先の事は どうなるか分からないし、悩んでも仕方ない!
…せめて殿様が、噂と違って良い人だったらいいなぁ~。
どうか、そうでありますように!
もしくは、これが夢でありますように!
…っていうか、なんでタイムスリップしちゃったんだろう?)
そんな事を考えているうちに駕籠は橋を渡り、城門に到着する。
そこは城の正門である大手門ではなく、城の裏の小さな門。
その門が開いて中に入ると、その奥にも小さな門があった。
着物を着た、門番らしき男が出てきて言う。
「これより先は姫君のみ お進み下さい!」
「えっ…!?」
駕籠の中で花音は声を上げた。
(今、なんて言った!?)
ばあやが抗議する。
「姫君のみというのは どういう事ですか!?」
「そのままの意味です。この先の奥座敷には、姫君のみ お入り頂けます。それ以外の方々は お帰り下さい。
荷物は こちらに置いて頂ければ、我々が中に…」
「そのような事、認めるとお思いですか!?」
門番の言葉をばあやが遮った。けれど門番は頑なに譲らない。
「これは決まり事です。
たとえ殿の奥方となる方の従者であっても、これを覆す事は出来ません!」
「そんな…!」
「どうしても従えぬと言われるのであれば、力ずくで従わせる事になります…!」
そう言って、門番が刀に手を掛けるのが、駕籠の中の花音にも見えた。
思わず駕籠から飛び出し、ばあやの横で頭を下げる。
「や、止めて下さい!それが決まりなら、それに従いますから…!」
「しかし、それでは…!」
ばあやが何か言いたそうに、花音の顔を覗き込んだ。
言いたい事は分かっている。
(お夏さんの偽者だって、バレないように独りでお城に入る…。
不安だけど、私がやらなきゃ…!)
花音は ばあやの袖を掴み、
「大丈夫…!」
と頷きながら言った。
その目が潤んでいる事に ばあやは気付いたが、自分を見つめる花音の力強い瞳に、強い決意を感じ取る。
「…分かりました…。」
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