「私には、将来を誓った方がいたんです…。けれど私の父は、その方との結婚を認めなかった。
それどころか、勝手に この藩の殿様の元へ側室として嫁ぐ事を決めてしまって…」
「そんな!どうしてそんな事を!?」
(そんなの、酷い!お夏さんの父親、最悪っ!)
思わず自分の母親と重ねてしまって、花音は怒ったように尋ねた。
言いにくそうな お夏の代わりに、ばあやが口を開く。
「お夏様の家は、大きな呉服問屋なのですが、恋仲にあった方の家が、お夏様の家の商売敵でして…親同士の仲が大変悪いのです。」
「そんな…!」
(まるで、ロミオとジュリエットじゃない!
そんな理由で認めないなんて、最っ低!器がちっちゃい!)
憤る花音だったが、少し冷静になって聞いてみた。
「それで無理矢理に別れさせられちゃったんですね。
…嫁ぎ先の殿様は、どんな人なんですか?」
すると、お夏は首を振る。
「どのような方なのか、顔も知らないのです。
知っているのは、竹代城主の千曲 信輝(ちくま のぶてる)様という名前のみ。」
「えっ!?名前しか知らない人の所に行くんですか!?」
「…はい…。」
「そんなの酷いじゃないですか!好きな人と一緒にいられないのに、顔も分からない人と結婚させられるなんて!」
花音は思わず立ち上がってしまった。
お夏の顔が沙織に似ている事もあって、余計に怒りが増す。
「なんで そんな…!」
「…殿様との繋がりがあれば、父の呉服問屋は、もっと大きくなります。
私は、その為に城へ…」
口では そう言っている お夏だが、今にも泣き出しそうだ。
(こんなの良いわけない!なんとかならないの?)
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