第116話

しかし、あの黒い靄は私を追ってくることもまた私の前に現れることもなかった。



やはりあれは呪いだったんだ、私の呪いだったんだ……



そう思うことで、私はどうにか心の平穏を取り戻した。




同時にクラスメートに楓の恐ろしい死にざまを伝えることはできる。



だがこの黒い靄に関しては誰にも言うのをやめようと思った。



言うのが怖かった。





楓の母親が死んだというニュースはその日やらなかった。



楓の家は母子家庭ではないはず……



父親が帰宅して、あの無残な母親の死体に気がつかないわけがない。



あれは私が見た幻覚だったのだろうか?




しかし違った。



出勤してこない楓の父親を不審に思った同僚が家を訪ねたところ、楓の両親の遺体を発見したことがニュースに流れた。



私が楓の家を訪問した二日後だった。



なにか大型の獣に襲われたような形跡があるとテレビで言っていた。




あれは本当だったのだ。



私が逃げた後、おそらくその日の夜に楓の父親が帰宅して襲われたのだろう。





自分が作った呪いとわかっていても、あれは思い出すだけでも恐ろしい……

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