第114話

私がふと疑問に思い、楓の母親から視線を逸らした時だった。



「あっ」



楓の母親の後、今から廊下に出る扉が開いているのだが、そこが妙に暗い。



その妙に暗い空間がうごめいているように見えた。



よく見ると、そのうごめいているところを周りよりもより一層暗く、まるで黒い塊というのがぴったりだった。



「どうしたの、若宮さん?」



「あれ」



私が黒い場所を指差し、楓の母親がそちらを向いた時だった。



「きゃー!!」



突然そこの黒い場所が、いや、黒い塊が楓の母親に襲い掛かった。



「ぎゃああ――!!助けて!!」



黒い塊、いや、靄というんだろうか?そっちの方がしっくりくる。



とにかくその真っ黒い靄が、楓の母親に襲い掛かった。



黒い塊から白い腕が伸びてきて、楓の母親を捕まえる。



楓の母親は居間から廊下の暗闇へ黒い靄に引きずられていった。



「ぎゃああっ!!」



「ああっ!!」



私は目を疑った。



この黒い靄は……楓の母親を食べている!!

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