第88話

ガラ……



1時限目の授業が始まるというときに教室のドアが開いた。



「楓……?」



結奈が楓を見ながら小さな声で言った。


教室がザワつく。



「おい、どうしたんだよ、ずっと連絡してたんだぜ」



翔が安堵と困惑が混ざったような顔を見せた。



楓はずっと連絡が取れていなかったのか……



それにしても、久しぶりに見た楓の姿は変わり果てていた。



いつも手入れが行き届いている髪はボサボサ。


頬はこけ、目の下にクマができている。


肌の色も悪く、まるで死人のようだった。



これがあの楓か……




あまりの変わりように、私は目をぱちくりさせてしまった。



「府川、大丈夫か?」



先生が声をかけると、楓は返事をすることもなく顔だけを向けた。



ぼーっとして心ここにあらずと言った感じだ。



「まぁ、とにかく席に着きなさい、授業を始めるから」



しかし、楓は自分の席に行かずに翔の前に来た。

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