第63話

「なんで百音が……」



楓が呻いた。



ギシッ……ギシッ……



風が吹くと百音の体が左右に揺れ、そのたびに木の枝がきしんだ。



百音が石井君と同じように首を吊っていたのだ。



たくさんある木の枝からは無数の人型が首を吊った百音と一緒に吊るされていて、風に吹かれてざわざわと音を立てる。



木の幹には皮を剥いだ後が広範囲にあった。



この人型は剥がされた皮から作られたのだろう。



凄い数だ……




「どういうことなの!?なんで百音が死んでるの!?病院にいるんじゃないの?」



「この人型はなんだよ!?誰がこんなにたくさん!?」



結奈と佑真が泣きそうな声を上げる。



情けない奴らだ。



首を吊っている百音は、石井君と同じように首が伸びていた。



顔はカラスについばまれた跡が痛々しく無残に残っている。

しかしそれだけではない。



「この死体なんだよ?おかしいぞ」


「なにかに食われてる」



翔と楓が言うようにそれは異様な遺体だった。



まるで獣に食われたような跡が全身にあり、骨が露出してる部分もある。



「心臓がない……」



「ほんとだ……心臓が……」



まるで抉り取られたようにぽっかり穴が開いていた。



これも食われたのだろうか?




とても正視出来ない有様だが、私も含めて全員が魅入ったように釘付けになっていた。




バシャンッ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る