第62話

「何の音だよ?」



「やだ、怖い」



「あれが鳴ってるんだよ」



翔が改装中の境界を指さす。



「工事中だろう、建物の壁の隙間から風が入って中で振動してるんだよ」



それにしても、気持ち悪い。


確かに暗闇の中に輪郭だけかろうじて浮かびあがる協会はとても不気味だった。




月を覆い隠していた雲が風に流され、月明かりが中庭を再び照らす。



「なにあれ!?」


「ああっ!!」


「何だあ!?」



私を含め、その場にいた全員が驚きの声を上げた。



木が変わっている……正確に言うとさっきと木の様子が全然違う。



枝という枝からたくさん細いものがぶら下がっているように見える。



あれはなんだろう?



まるでしだれ柳のようだ。



「おい。行くぞ」


翔たちが歩き出したので、私たちもその後に続く。


私たち以外の人がいる気配はない。


風が気を揺らす。



「えっ」


「あっ」


木の手前まで来て全員が固まった。



「ぎゃあああああ――っ!!」



夜の学校に結奈の悲鳴が響く。

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