若宮早苗7

第56話

ホームルームの時間になり、教室に先生が入ってくる。



その表情はどこか暗い。



「先生、どうかしましたか?」



挨拶が済んでから、生徒の1人が声をかける。



「ああ、ありがとう」



先生は力なく笑って答えると、教壇に手をついて咳払いをした。



「みんなに、これから辛いことを話さないとならない」



教室がざわつく。



「なになに?」



「何ですか?」



クラスメートがめいめいに疑問を口にする中、楓達は互いの顔を見合わせていた。



これは百音が死んだのかもしれない。



私は内心期待してほくそ笑んだ。



「みんなに残念な知らせだ、今朝、松下が交通事故にあった」



チッ……違ったか。



ええ、というどよめきが教室中に起きた。



全員の視線が松下の机に集中する。



「言われてみたら来てないけど」



「普通に休みだと思ってた」



「怪我の具合はどうなんですか」



先生は一瞬沈黙してから答えた。

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