第22話
月明かりなんて入ってこない地の底なのに、なぜか上の教会よりも明るく感じる……
なんで?
その祭壇の下に石井君が立っていた。
足下には人を象った像のようなものが二つ仰向けに寝ているようにある。
「石井君……どうしたの?」
石井君は無言で私を見ている。
私は石井君に近寄りながら話した。
「私も死のうと思って……」
石井君は答えない。
私が石井君の目の前に来ると、不思議と胸の奥が温かくなった。
石井君の言葉が私の頭の中に入ってくる。
「呪い」「殺す」「死!死!死!」
その言葉は私の全身に染みこむようだった。
石井君が私のポケットを指さす。
私はなにも考えずにカッターナイフを取り出した。
石井君が自分の手首を差し出して切るように促す。
私が切ると真っ赤な血がボタボタと地面に落ちた。
死んでいるはずの石井君からなぜ血が出るのか?
どうしてここにこうしているのか?
疑問はあるが気にならない。
そして今度は私の手首を切る。
同じように赤い血がボタボタと地面に滴り落ちた。
止めどなく落ちる血はみるみるうちに血溜りになる。
それを見ると石井君は足下からスーッと消えてしまった。
「石井君!?石井君!!」
地下に私の声だけが虚しく響いた。
そのとき地の底から風が吹き上げてきたような気がした。
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