第21話

「石井君……」



石井君は私をじっと見ると教会の扉の奥、暗闇の中に入っていった。



私は石井君を追うようにふらふらと歩いて行く。




死のうと思っていたけど、それよりも石井君が気になってしまい教会の中に入る。



中は外から見るほど暗くはなかった。



窓から月明かりが差し込んでいるから。



でも石井君の姿はない。




「石井君……いるの?」



キイッ……



音がしたほうを見ると祭壇の横に扉があって、そこに石井君が入っていく背中が見えた。



「石井君!!待って!!」



埃臭くて薄暗い教会の中を足早に歩く。



石井君が入った扉の奥には階段が下に続いていた。




地下……



ここに地下なんてあったんだ……



薄気味悪いなんていう思いは麻痺していた。



ただただ、石井君に会いたくて階段を降りた。




思ったより長い。



どこまで続くのかわからない……



まるでこのまま地獄へ降りていくような感じがした。





「ああ……教会だ……」



ようやく階段を降りきった地下にはもう一つの教会とも言うべき、祭壇があった。



そして周りにはたくさんの十字架。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る