第19話
「石井君だって私のこといじめるのを抵抗してた」
石井君は最近になってもあいつらに抵抗していた。
それが火に油を注いだ結果になった。
とくに楓の逆鱗に触れた。
これが私たちの中で石井君が一番ひどいいじめを受けていた理由だ。
「それに若宮さんは綺麗で可愛いし」
石井君が笑って言った。
死を決意した人の顔とは思えないくらい眩しい笑顔だった。
「私に何かできることある?」
「俺の最後の姿を見てほしい」
「最後……死ぬ前の?」
「いや。死んだ後」
「どうして?」
「若宮さんにずっと覚えていてほしいから。自由になった俺の本当の姿を」
石井君の申し出を私は異常とか悪趣味とかには思えなかった。
「いいよ。私忘れない」
どちらからともなく唇を重ねた。
「いつ……?」
「一週間後、場所は学校の中庭にある桜の木」
その後で時間を聞いた。
石井君と二人きりで会話したのはそれが最後だった。
いろいろ迷惑になるからと連絡先も交換しなかった。
そして一週間後……
私は石井君の最後の姿を見た。
私も同じになる。
もうすぐ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます