第17話

夜中になって私は家を出た。



ロープの他に、もし上手くいかなかったときのことを考えてカッターナイフも持ってきた。



痛いのは嫌だけど仕方ない。




幸いなことに私の家は学校まで歩いて行ける。



学校に着くと門を乗り越えて中に入った。



目指すは中庭。




歩いていて死ぬ前の石井君を思い出した。



いつものようにいじめが終わって私たちは家に帰る途中だった。



「若宮さんは死にたいと思ったことない?こんな毎日……」



「あるけど……そんな勇気ない」



夕暮れの中歩いている私たちの影が歩く先に伸びている。



「俺決めたよ。自殺する」



「ええっ……」



ダメだよと止める言葉は出てこなかった。



死ぬのを止めたからって私たちには何も良いことない。

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