第13話

なんということだろう……



楓の苛立ちは、石井君の死がなにかしら作用したものと思っていた。



自分の将来が潰れるかもしれない、いじめがバレて破滅するかもしれない、そういう恐怖が少しでも届いたのかと思ったが違った。




楓はただ、人が死ぬという場面を見れなかったことに怒っている。



要するに見たかったテレビを見逃した程度の意識なのだ。




「おいおい、それくらいにしとけよ。あんまり怪我が目立った俺らもマズいだろ」



ようやく額賀翔が止めに入った。




「はあ―!?あんたムカつかないわけ!?あんな自殺現場の動画より全然レアなもん見れなかったんだよ!?なあ!?」



楓は大きな瞳をさらに見開いて翔に食って掛かる。



「あの石井っていうの兄弟は?なんかいねーの?いたら連れて来いよ!!」



楓が私たちに命令する。




「まあ、待てって。そこまでやったらヤバいって。それに石井だってそんなにムカつくやつじゃなかったじゃねーか」




さすがに行き過ぎた楓をなんとか翔が宥めようとする。

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