第8話『家畜化マトリョーシカ』

【注意】

 本作は、畜産業ひいては第一次産業に従事される方々に対する攻撃の意図はありません。が、そういった方が閲覧すると不快に思われる表現があるかもしれないことを、先にお断りしておきます。

 いつも美味しいお肉や卵を、ありがとうございます。




——畜産。


 お肉、卵、牛乳。


 この飽食の時代に、それら無しに、我々の食卓は成り立たない。


 それらは、どこで作られているか?


 例えば、牛舎ぎゅうしゃに目を向けてみる。


 牛は、人と同じように、生きている。


 たくさん飼料を食べるし、排泄するし、病気だってする。


 それらは、朝にも昼にも夜にも起こりうる。


 家畜の管理は、物を管理するのとは大きく異なる。


 より、大変だろう。


 家畜を家畜たらしめるために、人間は……


〈〈〈自己家畜化せざるを得ない〉〉〉


 誤解を恐れずに言えば、そうである。


(決して、畜産業に携わる方々が、家畜のように扱われて当然である、などと言いたい訳ではない)


 事実、労働に関するルールが、他の業態に比べ、特別、いや、ゆるい。


 複雑に変化する自然を、生き物を相手にするが故に、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されないのである。


 急遽、皆が寝静まった深夜に、牛さん、豚さん、鶏さんの元に向かうことも、少なくはないだろう。


 交代制などで、労働者の最低限の健康・安全が守られているならまだいいのだが……


 そうではない場合が少なくないからこそ、この国の食料自給率は低下の一途を辿るのかもしれない。


 畜産をはじめとする第一次産業分野は、良い意味で言えば、第二次産業、第三次産業との分業、ではある。


 が、第一次産業従事者が減る中で、もしそこに皺寄せが行ってしまうのであれば……


 自己家畜化。


 それは、本末転倒なのではないだろうか。


 畜産に携わる方々が、我々が当たり前のように牛丼やとんかつ、唐揚げを食べられるようにしてくださる方々が、健康に安全に働けるような、仕組みが必要である……



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