第八話 草相撲

 蒸し暑い熱帯雨林の様な階層にてソラ一行は川のほとりで小休止をとっていた。

「ソラ......これ」

 アルは花のついた茎を見せ、ソラに手渡す。

「おや?オオバコですか」

 するとアルはソラの持つオオバコの茎をもう一つの茎に絡ませ引っ張る。

「異世界にもオオバコ相撲があるのですね」

 ソラはアルの誘いにのり引っ張りあうと切れたのはアルの茎だった。

「あっ......」

「ふふ。コツがあるのですよ」

「コツ?」

「えぇ。交差している茎の近くの両端を持ち引っ張るんです」

  角度をつけてしまうと力が分散して引っ張る力が弱まるのでなるべく折り畳む様にして引っ張れば力が集約し交差している茎には負担が少ない。ただ、やり方が同じ場合であれば茎の丈夫さ次第になる。

「......もっと大きいやつでやりたい」

「じゃあ、探しましょうか」

 二人はそれぞれ草相撲に使えそうな植物を探しに出る。そして数十分後二人はとある植物を担ぎ元の場所へと戻って来た。 

「アル君、それはなんですか?」

木目が凶悪な顔に見える細長い大木を抱えていた。

「そこら辺に生えてた」

 ケンさん曰くキングトレントと呼ばれるAランクモンスターらしい。生気を吸い、猛毒を孕んでいると言われるハンター殺しの異名を持っている。

「ソラのは?」

「キングマンドラです。とても生きが良かったので選びました」

 体長2メートルは優に超えるマンドラゴラ。こちらもAランクのモンスターで老婆の様な不気味な顔が貼りついておりその悲鳴を聞いたものは即死する植物界の死神と呼ばれている。精神に極振りしているソラだからこそ討伐できたモンスターだ。若返りの秘薬、変若水おちみずの原材料でもあり売れば億はくだらない薬草である。

 二人はお互いの獲物を絡ませケンさんの合図で勝負が始まる。

「そんじゃあ行くで〜。ハッケヨイ......ノコッタ!」

 ルールとして身体強化は無しの純粋な力勝負である。無論ステータス差がありすぎるためソラは身体強化を使って良いことになっている。因みに現在のソラの魂核値はVIIとなっており着実に強くなっている。

 一瞬拮抗するがやはり優勢なのはアル側でだんだんとキングマンドラがちぎれ始めていく。しかし、キングマンドラから漏れ出る酸性の液体によりキングトレントの幹が溶け始める。

 そして、その時が訪れる。

 ブチッと互いの獲物がちぎれ飛び二人は後方に倒れ込む。今回は引き分けの様だ。

 最後まで二人の草相撲を見ていたケンさんはちぎれ飛んだモンスターに哀れみを抱く。

「死体蹴りやな」

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