第四話 共同生活

○共同生活1日目


少年が強すぎる件について説明しよう。

アル君には許可をもらい鑑定の魔術を行使した。

その結果がこちら。

魂核値  : X

名前   :アルデバラン

種族   :神座ノ破片(人間)

レベル  :100/100

攻撃   :44751

魔力   :60629

物防   :33207

魔防   :39236

俊敏   :62377

精神   :200

スキル  :【固定】【加速】

世界概念 :【不変】

SP.0

 スカウターがぶっ壊れてやがる!と言いたいほどにステータスが高い。彼が何者なのかますます謎が深まるばかりだ。一撃で瀕死になったのも納得である。

 種族についてケンさんに聞いたところ開示権限が無いと断られてしまった。恐らくとてつもない重要な情報に違いない。

 未だ少年の一撃によるダメージが回復していないため動けずにいる。


○共同生活2日目

 

 体は依然として鉛の様に重たいが傷は癒え全回復した。そして勇者一行の装備を貸してくれるみたいで今は元気溌剌である。

 ちなみに早朝のためアル君はまだ眠っている。故に朝食を作るため台所へと向かうが手持ちに食料がないことに気がつく。

「材料は裏口の物置小屋にあるマジックバックに入ってるで!」

 ふよふよと場所を教えてくれるケンさんに感謝しつつ複数あるマジックバックのうちの一つから食パンにオーク肉を加工したベーコンとコカトリスの卵を取り出す。

 ケンさん曰くこれらのマジックバックは無謀にも奈落アビスに挑戦して亡くなったハンターの所有物らしい。マジックバックの中身は腐らず稀にそこらへんに落ちている様だ。

 調理器具もあらかた入っていたため魔導コンロを使いベーコンエッグとトーストを作った。ちょうどアル君も起床したためテーブルに配膳する。

「おはようございます。勝手に材料使っちゃったけどだめでした?」

 少年は首を横に振り嬉しかったのか勢いよく黙々と食べ始めた。

「.....頂きます......おいしい」

 その光景を見たソラは言わずもがな満たされていく。


○共同生活7日目


今回、アル君と一緒にオーク狩りをすることになった。

狙いはオーク肉。ベーコンが尽きてしまったためベーコンの材料を調達しに来たわけだが現在アル君の一振りでオークの集落が消し飛んだところである。

「......ごめん」

「ohスプラッター......」


○共同生活14日目


 夜になると肌寒くなる傾向にあり、たまにアル君がソラの布団に潜りにくる。しかし、ソラの体は金属できているため逆に冷たいのではないかと心配になるソラだが一人の時も同じなのか毎回うなされているため注意しづらい。

どんな夢を見ているのだろうか。


○共同生活30日目


 アル君の狩りを手伝う中で魂核値がIIからIIIへ、IIIからIVへと上がった。今は以前戦ったメタルスライムと同じようなステータスになっているがあのステータスを見てしまったからか見劣りしてしまう。

 それとアル君は意外にもナイフとフォークの扱い方が上手でいわゆるテーブルマナーを知っている。

「誰に習ったのですか?」

「とんがり帽子のおじちゃん」

「誰それ?」とソラはいうとアルは腰につけてあるマジックバックの中から7人の集合写真を取り出し見せつける。そして写真に映る右から2番目の魔術師らしき老人を指さす。

 しかし、ソラは老人の隣の人物に釘付けになった。

「これは?!」

「ソラ!」とアルは言うが正しくは女性が身につけている鎧がソラと同じものだったのだ。恐らく転生前のこの鎧はこの人の所有物だったのだろう。

 名前は、ステラ・ヴァーミリオンと呼ばれる勇者でアルの命の恩人らしい。

 なぜだろうか。

 この写真を見ると頭が痛くなる。


○共同生活60日目


本日は近場の湖にて水遊びをすることになった。

当然ソラはそのまま湖に入ったら沈んでしまうためケンさんの魔術で浮かしていた。しかし、アル君にとっては単なる水掛けなのだろうがソラにとっては大災害級の大津波だった。

 案の定沈んだ。

 ただ新たな発見としてソラは普段息をしていないという事実が発覚。故に水中でも沈むだけで苦しくはなかった。

 その後ケンさんに救出されアル君は一日中大号泣。その光景はまるで大切な人を無くしたかの様な悲しみを感じさせた。


○共同生活80日目


 ソラのモチベーションは上がり続けていた。それは完全にアルという少年の出会いからくるものだろう。

「ケンさん、魔術を教えてほしいんです。ついでに闘術も」

「急にどないしたん?」

「このままではいけないと思ったからです。それに何故だが私はあの少年を守らなければならないとそんな不思議な使命感が胸底から湧き出てくるのです」

「......それが外部の力によって植え付けられた仮初の使命だったらどうするん?」

 やはりケンさんは全て知っているのだとソラは確信する。

「私の本質は変わらない。私はただ承認欲求を満たせればそれで良いのです。それがたとえ仮初の感情だったとしても私に頼りたい人がいたらば完璧に応えてみせる。それが私です」

「ほんま、魔族らしい魔族やな。欲に忠実でイカれとる。こりゃ大物になるで。わかった、教えたる」

「因みにこの世にある魔術、闘術教えてくださいね」

「いや、流石に無理ちゃう?というかワイが疲れ......」

「期待に応えるということは非常に難しいのです。例えばオムレツの作り方を教えてくれと言われれば瞬時にハイと応えられなければ意味がない。それが佛跳牆ファッチューチョンであれ、スープ・ド・ポワソンであれ同様です。さぁ、始めますよ」

 そして、ケンさんによる逆スパルタ講習が始まった。


○共同生活365日目


そろそろダンジョン攻略の方も進めたいのでそのことについてアル君に説明したところ仲間になってくれるとのこと。

当初の目的だった仲間の勧誘に成功したソラは本格的に動き出し始める。

「シチューが食べたい」

「作ってあげるよ」

 アル君はかなりの大食漢である。道中食材が尽きぬ様管理せねば。

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