第三話 少年との出会い

 15階層へ上がるとそこは鬱蒼とした森が広がっていた。ケンさんの案内で道なき道を歩いているとゴブリンらしきモンスターが現れる。無論デコピンで破壊していくがモンスターとの遭遇率は格段に上がっている様だ。

 道中ステータスポイントを割り振りつつ歩いていると小さな広場へと抜け出た。広場の中心には小さなログハウスの様なものがあり作りは少々荒い。

「人が住んでいそうですね」

 ソラは迷わずログハウスへ近づきドアをノックする。すると出てきたのは小さな10歳前後の男の子だった。

「あっ...」

 その子は目を見開きまるで亡霊を見たかのような反応をみせた。しかし、感情は一変し怒りへと変わる。

「こんにち......」

「泥棒......」

 次の瞬間空の体が四散した。

あ、死んだかも。


...

......

............


 キュッキュッと何やら冷たいもので体を拭かれている感覚がした。体を動かそうにも最初に目覚めたあの時と同じで体がやけに重い。ステータスを確認したところ装備によるプラス補正が消失していた。恐らく装備品を剥ぎ取られたのだろう。

「おはようさん。まぁ、こうなるとは思っとったで。一応ことの成り行きは説明したところや」

 なるほど。

 ここに来て賢者の石のルールが適用されたのか。よくよく考えたらあんなところに高性能な装備品が都合よく置いているわけがない。いわゆるあそこは物置き小屋という名の宝物庫みたいなものだったのだろう。特別な情報は質問しなければ答えられない。それはあの物置小屋の場所や持ち主についても同様だ。

「君が、私の所有者だった人ですか?」

 ソラを磨いている少年に視線を向け話しかける。一瞬ビクッと体を震わせたがこくりと頷き答えた。

 未だに生かされているということは少年にとってこの鎧は大切なものなのだろうとソラは考える。

「なんだか申し訳ないですね。貴方の鎧に転生してしまうだなんて」

 しかし、意外にも少年は首を横にふり否定する。

「ちょっと......嬉しい」

 ぎこちない言葉遣いと恥ずかしげな表情にソラはガバッと上体を起こす。

「素晴らしい」

「......?」

 ソラは感じた。

 承認欲求メーターが現在進行形で上がり続けていることに。

「少年!いや、君のお名前は?」

「......アル」

「アル、良いお名前ですね。因みにご両親は在宅ですか?」

 アルは首を横に振る。

 どうやら訳ありの様だ。というか世界一危険なダンジョンで暮らしているのだから当然だろう。この少年には何か深い事情があるのかもしれない。恐らくケンさんに聞けば全て話してくれるのだろうがモラルは守るべきだ。故にケンさんを頼る上でそういうところは慎重にしようと心がけている。

「それはいけませんね」

ソラは視線をアルに合わせとある提案をする。

「もし、アルさんが良ければの話ですがここで住まわせていただけませんか?無論家事手伝いなんでもやりますので」

 するとアルは体を磨くのをやめ首が千切れんばかりに縦に振る。どうやら歓迎してくれるらしい。

 そして、今日より動く鎧と謎の少年との共同生活が始まった。それとケンさん。

「ワイもおるで」

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