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「おっ、山田惣菜店のお惣菜だ。いい匂い」


「トマト鍋だけじゃ寂しいかと思って」


 父さんは「ドラえもんのどら焼き屋さん物語」でドンドコ得体の知れない建物を建築しながら、よっしゃ! とガッツポーズをした。


「トマト鍋、ボク大好き! ありがと珠子ちゃん!」


「感謝するならタビトに感謝してください。提案したのはタビトだから」


「はあい。ありがとタビト」


 父さんがゲームをやめて立ち上がった瞬間、虎視眈々とソファを狙っていたマロがソファにぴょんとあがって寝転がる。猫は自由の獣だ、と父さんの蔵書のやたら表紙が強烈なライトノベルに書いてあった。まさに自由の獣なんだなあ、と思う。


 母さんが夕飯の支度を始めた。卓上用の電気鍋を取り出し、トマト鍋のスープをそそぎ、グツグツやりながら具材をいろいろと入れていく。

 なんだかワクワクしてきた。冬の到来だ。(つづく)

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