第2話 Wake up!
揺さぶりをかけてくる声を払うように頭を左右に振った。まだ眠りたくない。目覚めていたい。駄々っ子のような願いを繰り返し念じたことからして、既に私は眠たげであったのかもしれない。必死で目をこじ開けていた。ここで眠ったら向こうで起きねばならない。ここは外的な通信手段から隔絶されている。揺さぶりは時震〈タイム・クエイク〉となって知覚される。
観察者にとって、私は死体のように見えるだろう。けれど、私は自由自在に動き回っていた。この世界は今の私にとって比類なき現実なのだ。覚める瞬間、確固たる世界は一瞬でチーズのように蕩けてしまう。そのような恐怖が夜毎繰り返されるなんて(どうして夢と現実は同時に見ることができないのだろう!)。いや、私は両方を欲してはいない。心の奥底で望んでいるのは揺るぎない現実であり、実際に感じることができるのも常に現実としての事物の在り様だけだ。夢は夢として認識されず、いつも目覚めた私の外にある。それが悲しくてたまらない。私がただひとつ鮮明な感情を抱くのは、その一点についてだけ、それだけだ。
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