コンビニ・銀行強盗の成り上がり譚

沼津平成

序章:Reライフは強盗で

 白い世界で、高級なナントカという繊維の素材をふんだんに使用した布団にくるまっているみたいな気分だった。夢見心地のまま、「おい! 金出せぇ!」と叫んでいる自分がなんだか虚ろになってきた。ショウヤは、黒い覆面の向こうから店員を覗いた。

 自分と同世代くらいの若い店員。巷でいう「イケメン」などという奴とは程遠く、境遇もショウヤに似ていそうだ。

 なんだか襲うのが切なくなってきたが、ここで襲うのをやめたら刑務所行きは確定、出所した瞬間に餓死というくだらないことで人生を終えてしまう。

 人々、自殺をしたいとはいっても、1日でも生きていたいものだ。

 ショウヤは、いつの間にか用意されていた二万円をひったくると、コンビニの自動ドアをくぐった。


              *


 しばらくの間、街は自分のことで話題になっていた。決していい話題などではない。ショウヤは、複雑な思いがした。うれしいはずだ。自分のことが話題になっている。

 それなのに胸にこみあげてくる、この息苦しい気持ちは何だ?

 あくせくしながら、ショウヤは銀行への道を走った。九月とは思えない、何も感じない風が肌に触れている。

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