void 騎士団会議()
隆太たちは会議所にたどり着く。
そこには、隆太や文太、ゴルンを含め10数名が集まっていた。
当然リーゼは一番奥の席に座っている。
「?意外と全員じゃないんですね」
そう隆太が言うと、ゴルンは朗らかに笑う。
「まぁ、今回は一部分の配置変更だけだからな。そこの人間が集まって作戦立てるってだけだ」
そう言うと、ゴルンは二人を席に着かせ、自分は奥の方へと歩いていく。
そしてゴルンも席に着くと、リーゼが話し始めた。
「では、今から会議を行う」
そう言って始まった会議ではあるものの、特にピりついた雰囲気というものはなく、円滑に会議は進んでいった。
「それじゃあ、新しく騎士に任命した隆太だが……」
そして話題は隆太の事に移る。
「Aランク騎士として、警備に就かせる」
リーゼがそう言った瞬間、部屋にいた騎士がざわつく。
「隆太がAランク?まさか……」
「訓練を見ていたが、そんな様子は……」
「リーゼ団長!彼の実力を鑑みるにCランクでは?」
「静かに」
リーゼが一言告げると、一気に室内は静かになる。
リーゼは落ち着いた雰囲気で言葉を続ける。
「これは隆太の戦績を元に決めたことだ。彼はもう既に2体、バグルートを撃破している」
その言葉に、またもや室内はざわめく。
しかし、誰かが言った「異世界の力か……」という言葉に場はシン……と静かになった。
「なんであろうと戦力となる以上、この判断は間違っていないと私はそう判断する」
その一言に、騎士たちはビシッと姿勢を正し、一斉に「了解です!」と声を上げた。
その様子を見て、リーゼは首を大きく縦に振ると、
「では、今回の警備配置について。
いつも通り、Aランク……バグルートの単騎撃破が可能な人物と、Bランク……バグルートの複数撃破が可能な部隊を中心に、Cランク……バグルート及びその取り巻きの足止めが可能な部隊を周囲に配置していくが、隆太がAランクに加わったことで若干配備位置が変更となる。各自、確認してくれ」
リーゼは一通り話し終えると、水を一口飲んだ。
「では、他に何かある者は?」
「はい」
そう言って一人の騎士が挙手する。
「なんだ?」
「先日バグルート化した女性と子供が目を覚ましました。」
「了解。何か情報は?」
「女性と子供が親子であることを両者から確認が取れました。しかし、やはりバグルート化した原因についての記憶はないそうで……」
「……そうか。報告ありがとう」
リーゼはそう言うと、少し額をもむようなしぐさをする。
「原因のつかめない怪物化、厄介な物だな……」
会議室内が若干重い雰囲気になる。
その時だった。
外からバグルートの襲来を告げる鐘の音が鳴る。
リーゼはパッと立ち上がった。
「現場には隆太が向かえ!ゴルン隊はCランク数名を連れて一緒に現場へ!民間人の避難や現場整理を行ってくれ!他の者は緊急時に備えて待機しろ!」
「「「「「了解!」」」」」
そしてその場にいる全員がすぐに部屋を飛び出した。
隆太たちが現場に着くと、そこにはバグルートが。
バグルートはフライパンや包丁を振り回し、暴れている。
その周りには取り巻きともいえるような怪物が何体かおり、同じように暴れまわっている。
既に何人かの騎士たちが来て対処を始めているようだが、やや苦戦しているようだ。
ゴルンは辺りを確認すると、剣を取り出す。
「お前ら!騎士の援護だ!雑魚どもを刈り取って民間人を守るぞ!」
「「おう!!」」
ゴルンはすぐに周囲の怪物たちに切りかかり、ゴルンの仲間たちも同様に動き出した。
隆太はすぐにドライバーを構え、赤の神石をセットする。
『武神!』
「変身!!」
そのままボタンを押すと、真っ赤な鎧が装着され、すぐに手元に剣が召喚された。
「なんだぁ!?あの姿?」
ゴルンたちは一瞬隆太の姿を見て戸惑うものの、すぐに調子を切り替えて自分の目の前の相手に専念する。
隆太は剣を上段に構え、一気にバグルートへと振り下ろす。
バグルートは、手に持っていたフライパンで応戦し、そのまま剣をはじいた。
そのまま右手に持っていた包丁で隆太を突き刺そうとし、隆太は飛びのく。
「硬っ!?……あれを躱して攻撃しなきゃきついな……」
隆太は再び剣を上に構え、またもや正攻法で振り下ろそうとする。
当然バグルートも剣の線上にフライパンを構え、防御を行おうとした。
しかし、剣はバグルートの手前で空を切った。
思わず意表を突かれたバグルートに隆太は一歩近づき、剣を振り上げる。
今度は防御されることなくバグルートにダメージを与え、切り上げの勢いでフライパンを吹き飛ばした。
「これで終わりだ!」
隆太はそう叫び、ベルトに装填していた神石を取り出して、剣に装填する。
『ラグナロク:スラッシュ!』
赤いオーラをまとった剣でバグルートを横薙ぎに一閃する隆太。
見事に決まった一撃はバグルートを爆発させる。
隆太は少し見回すと、変身を解除した。
その途端、騎士たちが歓声を挙げて駆け寄ってきた。
「お前、隆太、凄いな~それ!」
「かっけー!」
「剣筋もすごくきれいだったし、Aランクって半信半疑だったの、謝るわ!」
そう言ってわちゃわちゃしている皆に、あたふたする隆太。
「いや、チートだから!別に俺は……」
「チィトって言うのか!?その姿!」
「不思議な名前だが、なんか強そうだな!」
そう言って笑いあう騎士たち。
「いや、これ位強いのがいれば、少しは楽になるな!」
ゴルンも少し肩の荷が下りたように笑っている。
——その後、騎士団内で、「隆太がチィトという姿に変わる」という話が広がってしまい、訂正できなくなった。
——その後、誰もいなくなった場所に、フッと人影が現れた。
「隆太君……」
それは、物陰から一部始終を見ていた志江だった。
志江は先ほどのことを思い出し、ため息をついた。
「私もあんな力があったら、隆太君と一緒に……」
そんな彼女は、ふと道端に落ちていた青く輝く丸い石に目が止まった。
「これって——」
彼女はそれに手を伸ばし——
<バグルート図鑑>
クッキングバグルート
身長:187.5㎝
体重:223.2㎏
特色/力:調理器具を武器にした戦闘
バグルートの一体。
○○が〇に○○ことによって生まれてしまった○○○○〇。
○○も、○○も○○に○○され、○○する。
調理器具を武器にして戦い、人々を調理しようと暴れまわる。その料理は、激ウマだとか……?
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