int クラスメイトたち()

——翌日。

今日は隆太とリーゼで王国の研究所を訪れていた。

隆太の持つドライバーについて調査を願うべきだとリーゼが提案したからだ。


普通の能力では解析が難しいが、隆太の場合、物質として表れている。

そして、リーゼが触れる以上、他の人でも使える可能性が存在しているという事だ。


そういったことを研究する場所が、王立研究所である。

王国でも随一の頭脳を持つ人たちが、日夜王国の発展のために研究を行っている場所だ。



「それにしても、いいんですか?わざわざ付き添ってくれて」

「ん?ああ。スケジュールの調整はしっかり行っているし、問題ない。それに、私が君を騎士として取り立てたんだ。面倒を見るのは当然だ」



そんな会話をしながら研究所の入り口まで行くと、そこには人影が。



「翔太君、久しぶり」

「やぁ!久しぶりですな、隆太君」



隆太のクラスメイトの翔太が白衣を身にまとい、試験管を手に待っていた。

彼の名前は佐藤翔太。彼は騎士を辞退した後、王立研究所に身を寄せる事にしたクラスメイトだ。

彼の“能力”は、研究所の人たちからも人気で、すぐに受け入れられたらしい。



「話は聞いていますぞ。ぜひお入りください、騎士団長殿」

「リーゼで構わない。今日はよろしく頼む」

「了解です、リーゼ殿。ささ、こちらへ」



リーゼと隆太は案内されるまま、研究所の奥へと歩みを進めていく。

しばらく進んだのち、指示された部屋に入る。



「わ……!」



隆太は部屋の内装を見て驚く。

その部屋はまるで日本の極々一般的な研究室そのものの様相をしていたためである。

部屋の中には数名がフラスコ等やパソコンなどを使って何やらやっているのが見えた。

彼らは隆太たちが入ってきても集中を乱さずに作業をしている。


翔太はそんな彼らを気にも留めず二人に席を勧めると、緑色の液体を「ささ、どうぞ」と差し出した。

リーゼはすごく戸惑っていたが、隆太は何かに気づいてそれを飲む。

隆太の目から少しだけ涙がこぼれる。



「お茶だ……」

「私の能力で作ったものですぞ。まぁ、お茶に詳しくはないので、お世辞にも味が良いとは言えませんが……」

「それでも久しぶりに日本の物に触れられた気がするよ。ありがとう」

「お気になさらず」



そんなやり取りを二人でしたのち、本題に入る。



「それで、見てもらいたいのはこれなんだけど……」



隆太はそう言ってドライバーと神石を差し出す。



「これは……?」

「俺のチート、のようなもの」

「なるほど……」



そう言って翔太は神石に触ろうとしたその瞬間、「待ってくれ」という声がかかる。

翔太と隆太は声を発した人物——リーゼの方を向く。

リーゼは警戒を崩さずに告げる。



「気を付けてくれ。それを私が最初に触った時、ひどい頭痛がした。取り扱いは慎重にした方が良いと思う」

「承知しました」

「え、そうなんですか……!?」



隆太は驚く。

この石がそんなに悪影響をもたらすものだとは思ってなかったからだ。

翔太はおそるおそる石に触れる。

しかし、次の瞬間、その手を離した。



「これは……!!」



そして、すぐに頭に手を当てた。



「……少し触っただけなのに、頭が痛み始めるとは……」

「……そんなにやばいのか、これ?」



隆太は神石を手に取り、まじまじと眺める。



「隆太君がそれを平然と持てる方が謎なんですぞ……?」

「いったいどうしてだろうか……?」

「しかし……」



そう言って翔太はドライバーを手に取った。



「こっちは何かにつかえそうですな。実子殿~!」



そう言って翔太は部屋から出ていく。

しばらくすると、翔太が少女を連れて戻ってきた。



「あ、磯田さん」

「隆太君、と……」



彼女の名前は磯田実子、彼女は騎士になったクラスメイトの一人である。

そんな彼女は、リーゼを見て固まった。



「えっと……」



彼女はどこか気まずい様子で落ち着かない様子である。

そんな彼女にリーゼはため息をついた。



「……騎士団長のリーゼだ」

「あ。はい、騎士団長さん……」



やや、気まずい雰囲気が流れる中、それを無視するかのように翔太は話し始める。



「実子殿には、これを鑑定してほしかったんですよ」

「これ?」



実子は、切り替えるように翔太の差し出すドライバーを見た。

そして、じっとドライバーを見つめると、実子の周囲にはたくさんの液晶画面のようなものが現れる。



「……なにこれ。詳細鑑定を少ししただけなのに、こんなに情報が出てくるなんて……」

「私にも見せてくだされ」

「お願い」



そう言って実子が液晶を指ではじくような動作を行うと、その画面は翔太の方へと向きを変える。



「なるほど……これは……それなら……」



翔太はぶつぶつとつぶやきながら、思考を巡らせている様子だ。

仕方なく、リーゼと隆太は待つことにした。

しばらく待っていると、ある程度考えがまとまったのか、翔太がこちらの方へと顔を向ける。



「すみません、待たせましたな」

「いや、問題ない。それで、何か分かったのか?」



リーゼがそう聞くと、翔太は落ち着いた様子で答えた。



「ええ、とりあえず、リーゼ殿が望んでいるであろうことからお答えいたしましょう」



そう言って翔太は手のひらを上に向ける。

するとそこから光が溢れ、手には隆太のドライバーと同じような物があった。



「ドライバーの複製は可能です。……まぁ、これはおそらく力の源が同じだからでしょう。しかし、これを使うには二点の問題があります」



そう言って指を二本立てる翔太。

リーゼは緊張しながらも、「その二点とは?」と話を促す。



「一つ。これは一定のなにか、がある人物にしか使えない物であるという点ですな」

「何か、とは?」

「分かりませぬ。単なる強さでないことは明白ですが、それが何かまではまだ解析中ですな」

「なるほど。それでもう一つはなんだ?」



リーゼがそう言うと翔太は唸った。



「ううむ。こっちの方が問題ですな。このドライバーは、あくまで力の仲介をなすものであるという点ですな。隆太君の持つその力の籠った石でないと今は使えません」

「今は?というと?」

「その石も、私たちの持つ、『チート』も同じ、神様からいただいたものであるならば、私たちの力を抽出した物を用意することで、適正者がそのチートを使えるようになるかも……」



そう言って、翔太は顎に手を添えた。

リーゼも、どこか、考えている様子だ、



「量産は難しいと……」

「現状、そういう事です」



翔太がそう言うと、リーゼはため息をつき、立ち上がる。

隆太もそれを見て、慌てて立ち上がった。



「時間を掛けさせた。すまない」

「いえいえ。私たちもこうやって研究を進めることが、最善だと思っていますので」



リーゼは頭を下げ、隆太もそれに合わせて礼をする。

そして、去ろうとする前に、思い出したかのように実子を見た。



「あ、そうだ、実子。もし、こちらに異動したいのなら、私が手続きをしよう」



その一言を聞き、実子は固まった。



「……え!?」

「君の、いや君たちの境遇を完全に理解しているとは言えない。しかし、私としては、君達が望む場所に居られることが、最善だと考えている」



そう言って、リーゼが去ろうとしたその時。



「おい、君はなんだ!ここは関係者以外、立ち入り禁止だぞ!?」



誰かの怒った声が聞こえてきた。

四人が声のした方向を向くと、そこには見覚えのある少女が。



「「志江さん!?」」

「三森殿?」



しかし、何やら様子がおかしいことに気づく。

目に光がともっていないのだ。



「あ、隆太君、見つけた~」



志江はへらへらとこちらに近づいてくる。

そんな彼女をリーゼが止める。



「待て。ここで何をしている、志江」

「団長?邪魔しないで……!」



志江は突然表情を苛烈な物に変え、激昂する。

そんな情緒不安定な様子に対し、皆戸惑う。



「三森殿ってあんな感じでしたっけ?」

「いや、そんなことないはず」

「もっと落ち着いている子よ」

「えへ、あうっ!!?」



そんな志江は、突然苦しみだした。

自身の体を抱きしめるようにしたのち、叫んだ。



「隆太を殺す、殺してやる!!」



そう言った瞬間、志江の体が変異し、バグルートになる。

全員が固まり、そして目を見開いた。



「バグルートだと!?いったい何故!!!」



リーゼは剣を取ろうとするが、ここは研究所内。剣は預けてしまっていた。

そんな彼女を見て、隆太はすぐにドライバーと石を手に取った。


神石をドライバーにセットし、回転、ボタンを押す。


『武神!』


「変身!」


すぐに変身を終えた隆太は、バグルートに向かい合う。



「すまない!ここには重要な研究資料も数多くある!できれば外に連れ出してくれ!」

「分かりました!」



研究員たちの声を聴いて、すぐにバグルートを掴んで引っ張っていく。

隆太は外に飛び出すと、そのままバグルートを投げ飛ばす。



「少しの間、我慢してね!」



そう言って、剣を召喚しバグルートを切り上げようとするが、バグルートは火の玉を多数呼び出してぶつけようとしてくる。



「あっつっ!?」



その火の球を躱すように隆太は飛びのいた。

バグルートは隆太に向かって火や水の球、風や土の刃を撃ち続けている。

隆太は軽快にそれを躱すが、近づくための隙が一向に見えず、膠着状態に陥る。

そんな時、バグルートの後ろから影が現れた。



「後ろがガラ空きだっっ!!」



リーゼは目の前の相手しか見えていなかったバグルートに対し、痛烈な一撃をくらわす。

不意の一撃にバグルートは体から何かを落とした。

隆太は落ちた物を見て、すぐに拾い上げる。



「これ……!!」



それは、青色の神石だった。

隆太はすぐにそれを懐にしまうと、ドライバーに装填された神石を回転させる。



『ラグナロク:シュート!』



隆太の放った必殺技は見事にバグルートに吸い込まれるように決まり、バグルートは志江に戻った。



「志江さん!!」



隆太は変身を解除し、彼女の元に駆け寄る。

リーゼもすぐに彼女の元に駆け寄ると、そのまま抱き上げた。



「とりあえず、医務室に連れて行こう」

「分かりました!」



そう言って、すぐに移動を始める二人。

翔太は戦いの一部始終を見届けながら、冷や汗を掻いていた。



「あんな化け物が……」

「翔太!」



そこへ、実子が駆け寄ってきた。



「実子殿?」

「これを見て……さっきの化け物の鑑定結果」

「……これは!?」

「早急に調べる必要があると思う」

「……そうですな。打診してみましょう」



そう言って実子と翔太は足早に研究所へと戻っていった。





<バグルート図鑑>


マギアバグルート

身長:167.8cm

体重:118.5㎏

特色/力:ありとあらゆる魔道を修めた多彩な魔術


バグルートの一体。

○○が〇に○○ことによって生まれてしまった○○○○〇。

○○も、○○も○○に○○され、○○する。

様々な魔法を扱うことができる、魔法使いのエキスパート。

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