void 始まり()④

さらに、やや表情のこわばる隆太を見て、リーゼは言葉を続ける。



「……あぁ、大丈夫だ。彼女は生きている。こうやって討伐することで、まだ戻れる段階だったからな」


「そ、そうなんですか……?」



隆太が女性をじっと見つめると、まだ息があることが分かった。



「……見てしまった君には、詳しい話をしないといけないな。今から本部に戻って——」



しかし、彼女の言葉は続かなかった。

なぜなら、彼女は殴り飛ばされていたから。

——新たに現れた、怪物によって。



リーゼは思わぬ強襲に意表を突かれ、まともにその攻撃を食らってしまった。

彼女の腕はあらぬ方向に曲がっており、剣を握って戦うことは難しいだろう。

さらにまずいことに、足が落ちてきたがれきに挟まれ、動けなくなってしまっていた。



「リーゼさんっ!!?」


「……すまない、少し油断をした……」



隆太が駆け寄ろうとするのを、リーゼは目で制止させる。


「隆太。君はその人を保護し、急いで騎士団本部に行って助けを呼んで来い。私の事は気にするな!」


そう言うリーゼはなんとか足を取りだそうとしつつ、化け物に向き合っている。

このまま、隆太が騎士団に行ったとしても、おそらくリーゼは助からないことを隆太は確信する。


——もしも、一人で騎士団に向かえば。

確かに、リーゼが助かる確率は上がるだろう。

しかし、気絶した女性の命は保証できない。


隆太は、そんなおぞましい考えを振り払う。



一番確実にたくさんの人を救えるのは、このままリーゼ団長を囮に騎士団本部に駆け込む事なのだろう。

しかし。



「おらぁ!怪物!?こっちだぁ!!」



隆太には、その選択が、出来なかった。

出来る限り体を大きく見せ、こちらへの誘導を仕掛ける。

化け物も隆太の方に気を取られ、そちらへと向かっていく。

リーゼはそんな隆太に向かって叫ぶ。



「馬鹿!何をやっているんだ!君じゃそいつには……!」


「分かってます!でも、俺が時間を稼げば、皆助かるでしょう!?」



隆太のその言葉に押し黙るリーゼ。

隆太は目の前の怪物に向き合い、その攻撃をいなそうとする。


しかし、隆太はまだ鍛錬を始めて一か月の新米だ。

熱意があって、その月の一位を獲得したものの、実力としてはまだまだ発展途上。


そんな彼に怪物の痛烈な一撃が無常にも突き刺さる。



「がっ!!?」



かろうじて受け身を取り、ダメージの軽減はできたものの、体はふらつく。



「隆太!!」



その様子を見て、思わず叫ぶリーゼ。

そこで、ハッと昨日の記憶がよみがえる。

——あの石は、まだ懐にしまってあったはずだ。



危険を感じる石だが、それでもその中に眠る莫大な力。

現状を打開するには、これしかなかった。



「これを使え!!」



足も、腕も使い物にならない自分じゃ絶対に無理だと、リーゼは左手で隆太の方に石を投げる。

隆太は、その石を一瞬見ると、驚きを隠せない表情でそれをキャッチする。



「なんで、これをリーゼさんが……?」


「それを使えば、そいつに勝てるかもしれん!だから……」



リーゼが声を張り上げる中、隆太は心拍数がどんどんと上昇するのを感じていた。

あの時散らばった四つの石。

その中の一つが、この手の中にある。

隆太は息を大きく吸い、そして右手を握る。

その手を開くとそこにはデウスドライバーが出現していた。

隆太はそれを腹にかざした。



『StartUp!』



ドライバーはベルトを射出し、腹に巻き付く。

隆太は石を正面にかざし、ぐっと握る。



『武神.g(ドット・ジー)!』



その赤い石をドライバーに装填し、手のひらで石を回転させた。

石はギュルギュルと音を立て、回転を速めていく。



『Loading!Loading!』



隆太はその拳を正面に構え、叫ぶ。



「変身!」



隆太は、ベルト上部の左側にあるボタンを押下する。



『Running!』



その瞬間、けたたましい音楽と共にベルトから剣や槍等、武器を模した鎧が出現し、隆太に装着されていく。

やがて、全身に赤と黒の鎧が完成すると、ドライバーは声を上げた。



『引くは手薬煉、返すは刀。宣言!我が武技に負け無し!』



化け物も、リーゼも、何が起こっているのか分からない、といった様子で隆太を見ている。

隆太は両手をぐっと握ると、まっすぐに化け物を見た。

——これなら、いける。

どこまでも、力が湧いてくる!

勢いよく駆け出し、化け物を蹴り飛ばす。

先ほどとは全く真逆の形で吹き飛ぶ化け物。


凄まじいほどのスペックの上昇に少し固まるが、すぐに剣を召喚し、化け物へと向ける。

化け物に肉薄し、一閃を決める。

化け物はそれだけでのけぞり、膝をついた。



「これで最後だ」



隆太は、相手にできた大きな隙を見計らって、再びドライバーに装填された石を回転させる。


『ReLoading!ReLoading!』



再び、ドライバーからけたたましい音楽が鳴り響き、隆太の右足に光が集まっていく。

隆太は今度はドライバーの右のボタンを押下し、そして左のボタンを押した。



『ラグナロク:シュート!』



隆太は左足で踏み込み、高く飛ぶ。

そして、落下の勢いを加えた右足の蹴りが化け物へと炸裂した。

その一撃を食らった化け物は、その込められたエネルギーを発散するかのように爆発した。



そしてそこに残ったのは、太陽に照らされて輝く装甲を持つ、赤い戦士であった。



~~ヒーロー~~


チィト 武神フォーム

  SPEC

身長:175.8cm

体重:70.3kg

パンチ力:15t

キック力:38.2t

ジャンプ力:30m(ひと跳び)

走力 5.2秒(100m)

必殺技:ラグナロク:シュート



~~バグルート図鑑~~

ハイパワーバグルート

身長:210.9㎝

体重:129.4㎏

特色/力:剛腕/超パワー


バグルートの一体。

○○が〇に○○ことによって生まれてしまった○○○○〇。

○○も、○○も○○に○○され、○○する。

その剛腕は単純ではあるが強力であり、ありとあらゆるものを破壊するまで止まることは無い。

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異世界に召喚されたら、ヒーローになりました~皆を守るため、俺、変身します~ 青猫 @aoneko903

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