void 始まり()③

——翌日。隆太とリーゼは二人で街を歩いていた。



「今日はせっかくの休みだというのに申し訳ないな」


「いえ、こちらこそ。俺の為に剣を見てもらえるとは……」



隆太がそう言うと、リーゼは少し頬を掻く。



「……私の代から始めたんだ。頑張っている者に何ができるかと考えたとき、手になじむ道具があった方が、上達も早いと思ったからな……」


「そうなんですね」



少し雑談を交えつつ、武器屋へと歩を進める二人。

しかし、突如として状況は一変した。



「ば、化け物!!!」

「キャーッ!!!!」



場は混乱につつまれ、逃げまどう人々が向こうからやってくる。

その奥に見えたのは、人間を歪に象ったような怪物の姿があった。

何かを守りたかったのか、その身には多くの盾を身に着けているが、そのすべてが体に張り付いており、自身を守るものとしてしか役立てないことが分かってしまう。



——バグルート。

この世界で最近暴れだした化け物。

その正体も、どうして暴れまわるのかも不明であり、各国が騎士団等を使って制圧しているのが現状である。



どこか悲痛な表情をしている怪物はこちらの方へと歩いてきながら、街を壊している。

その様子を見たリーゼは瞬時に表情を切り替えた。



「すまん、隆太。剣の選定はまた今度になりそうだ」


「いや、全然問題ないです。——なにか、俺にできることはありますか?」


「……住民の避難を頼む」


「分かりました!」



隆太は周囲を見回し、避難できていない人がいないかを探す。

リーゼは腰に携えていた剣を解き放ち、怪物に向かっていく。




リーゼは怪物に切りかかろうとするが、直前で何かに阻まれる。


「!?……何かしらの透明な壁か」


このままでは攻撃を食らう事を危惧したリーゼは一旦怪物と距離を取った。

すぐに体勢を整えたリーゼは、今度はフェイントを交えつつ、怪物の背後に回って一閃を決める。

今度は阻まれることなく、怪物にダメージを与えられたリーゼは、この戦法が有効であると確信し、敵の意表をついた攻撃を繰り返す。


横薙ぎ、背後、上、下。


ありとあらゆる攻撃パターンを混ぜながら、怪物を翻弄していくリーゼ。

怪物も衝撃波を飛ばすことで対応しようとするが、リーゼに見切られ、躱されてしまう。


やがて、怪物が明らかに弱った所を見せ始めた。

リーゼはその姿を見ても油断せず、一撃を加え続ける。

そして、凄まじい攻防を決めたのち、怪物は倒れ込んでしまった。

リーゼはその怪物の背中に剣を突き立てる。


トドメの一撃を決められた怪物はとうとう動かなくなった。



逃げ遅れた人を捜索していた隆太もホッと一安心し、リーゼの元に行こうとする。



「リーゼさん、お疲れ様で……」



しかし、リーゼが剣を突き立てた怪物が、徐々に姿を変えていく様子を見て、絶句する。

——それは、やがて人間の女性に姿を変えた。



「り、リーゼさん、それって……」



リーゼは足元の女性を見て、思い出したように言う。



「……あぁ、そうか。君たちにはまだ言ってなかったな。——怪物の正体は、人間だ」




~~バグルート図鑑~~


バリアバグルート

身長:200.5㎝

体重:95.8kg

特色/力:盾/障壁




バグルートの一体。

○○が〇に○○ことによって生まれてしまった○○○○〇。

○○も、○○も○○に○○され、○○する。

自身の周囲にバリアを展開したり、バリアを飛ばすことで相手に攻撃する。

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