第2話 ドローンがいる庭


「おはなしには、だれやかれやでてくるの?」


『ふるえてばかりいる主役がでてくるンデス』


「森の生まれたての子鹿のおはなしなんだ」


『こわがりのおはなしデスネ』


「つづけてよ」


『プルプルしているところにアシがないのがバァとでた』


「ぷかぷかうかべるなんて、おばけだね。こわいこわい」


『いっぴきにひきではなくクローゼットやベッドの下、くらがりからたくさんデタ』


「わー!それで、どうしてるの?」


『白くてすきとおったのにおっかけられてるトコデス』


カバンからでてきたガラクタをSくんはいじっていたが、ふと顔をあげた


「どこか、あるきながらきかせてよ」


『・・・・・・階段をあがった屋上に庭があるので、そこにしまショウ』


読書コーナーをはなれたロボットと少年


ロボは、うずまきみたいな階段を、かちゃんかちゃんとのぼる


木でできたすべすべのてすりに手をやり、Sくんはくっついてのぼる


のぼりきったロボットがドアの前にたつと、どっかでピロリンと鳴った


あったかくて明るい惑星についた宇宙船のハッチみたいなドアをくぐった


♦♦


いっぱいにうわっている草木にいくつものつぼみや実がついていた


植物たちは葉っぱで、お日さまから光をうけとっている


ブンブンうなりながら、黄色い点がとんでいる


歩むのをストップせずに、ロボはおはなしのつづきをはなす


『おばけたちは、なかまをふやそうとしているようデス』


「なんで増えようとすんのかな」


『こわがりは、クローゼットにかくれてブルブルふるえル』


「どうなっちゃうんだろう?」


『ガタガタガタガタ、おとがたつのでおばけがこわがりだシタ』


「おばけだって、ぶるっちゃうことあんだね」


『ついにはじっとしてられなくなったのでバンッと戸を開けとびだシタ』


「あらららら」


『!!!ビックリしたひょうしにおばけは消えてけむりになってシマッタ』


「ヘンテコだね」木の実をつっつきながら言った「そのおはなし」


庭にただよってくるけむりみたいなのはなんだろう


みんなして消えさったおばけのなごりだろうか


白いモクモクがふれた花や葉っぱは、しずくをたたえている


ハリでさされたらくたばってしまうだろうでっかくてまるまっちいハチが空中にいる


いや、それは生物ではない、庭をおせわ中のドローンのうちのひとつだった


いくらか仕事熱心すぎるんじゃないかなというくらい、ミストをふきだしてる


やがてじぶんのうみだす白いベールの重なりのむこうにフェードアウトした


♦♦♦


Sくんは本をかりずに、図書館をあとにした


おもちゃのクルマみたいなマシンがはしってくる


子どもとすれちがいにしずかにとおりすぎていった


運転席はなく、ひとりでに動いている


ミニカーがやってきた道のまわりは木々がたちならぶ


たのしそうに鳥がとびかっている


リスやウサギやキツネが顔をだしそうだ


トコトコと少年は道をすすむ


ところどころ、開けたトコロになっていた


そんなトコロには、カタチのヘンテコなたてものがあった


ソーラーパネルなり風車なりで、電気を産むさいちゅうらしい


やがて道がおわり、風景がひろがった


どこかをめざしているSくんのむこうに、たてものが集まっている


雲やよくわからないメカの浮かぶ空に、飛行船が浮かんでいる


お天気や、マチのデータを採集して、パンパンになったとこらしい


まんぞくそうに、ちいさいうなりをひびかせて飛んでいた


マチのなかへとSくんはむかう


白っぽく、滑らかで、のびやかな道路とたちならぶビルやタワー


おひさまは、あっちへこっちへ、光の手をさしのべている


みどりがおおっている、いならぶビルのカベ


ヒトがあるく道のまわりにある、ソーラーパネルや小さいガーデン


カーブした線がひかれているようにみえるのは、レールだ


なんにんかのヒトがいて、とんでくるハトにのこりものをやってる


そこらはまちあいで、時間がくるとやってくるのはトラム――路面電車


円いあたまをして立っている時計を見て、Sくんはハリの角度からなにか

読みとる


それから歩道のクリーニング中のメカをとびこえ、はしっていった


ビルとビルのあいだをかけていったかれは、ふいに消えた


そこらの一画には、なにやら懐かしい店がまえがつらなる


古くさいのとまあったらしのとが、顔をつきあわせている


あっちにならんでいるのは、あれで自動販売機なのだろう


食べものかさだかではないのや、ジュースやアイスらしいのが表示板にうかぶ


こどもを消しさった出入り口には、いつのものかしれないマシンが並んでいる


なかのフロアにはマシンが何列かならび、カラフルに光る


迷路のねずみみたいにウロチョロしていた少年だったが、足をとめた


イスとマシンあって、誰かがすわりキャンディかスティックかをさわっている


光る画面では、ふりそそぐ敵だかをかいくぐる戦闘機がチョコマカしていた


そこいらいっぱい、たくさん電子音がはねまわっている


おおくの種類の音がはねているのに、ふしぎにピコピコというひとつの音になっていく


列になったきみょうなエイリアンと戦闘機がぶつかりかける


はじけた味方機をみとどけ、Sくんはここをあとにした


かけていってトラムにとびのる


指紋だか網膜だかのスキャンがオートですんだとき発車のチャイムがなった


広いウィンドウごしに、マチが流れをつくりだす


あしが四本のいきものがよこぎったけど、あれはメカなのか犬なのか?


                ➜


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