第70話

「和泉屋の正二郎様……で、ございますね」



「一端の商人のつもりだが世間では若旦那とか呼ばれてね」



「いえ、若旦那なんて素敵な響きじゃないですか!私は好きですよ!」



たしかにキャバやってて「若旦那」なんて客はいなかった。



なんか新鮮!




「もしも差し支えなければ、若旦那とお呼びしてもよろしいでしょうか?」



これくらいやらないと江戸の遊女気分がのってこないからね。



それに、どうせなら名前で呼ぶのも焦らしてみよう。



「ああ。好きなように呼びなさい」



笑顔で答えた若旦那の顔には嫌がる気配は感じなかった。



「はい。若旦那」



きゃー!盛り上がってきたよ!吉原気分♪



「失礼いたします~」



襖を開けて芸者さんたちが入ってきた。

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