第62話

お由美とイネが話したときに拍子木が鳴った。



「吹雪太夫でござーい!」



若い衆の声が外から聞こえる。




「吹雪」という名前に反応した私は格子の前に張り付いて外を見た。



「これが花魁道中よ」


イネが耳打ちする。



これが……この妓楼で一番、別格花魁の吹雪さんか……




見習いの新造と禿を引き連れ、若い衆に傘をささせて花魁独特の「外八文字」という歩き方をする吹雪さんは圧倒的だった。



豪華絢爛な姿もさることながら、私はその圧倒的な美貌にショックを受けた。




小さな顔に綺麗な鼻筋、涼しげでどこか憂いのある瞳と、対象的に煽情的な紅をひいた唇。



なんという美しさだろう。




これが花魁か……

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