第50話
それに簪を割り引いてもらってもお金ないし。
部屋に戻って本読もうっと。
そう思いこっそり戻ろうとしたときだった。
「紅若」
「あっ」
振り向くと玄関の左側には女将さんが座っている。
「さっそく読んでるんだね」
ニッコリと女将さんが言うと私は座って「はい。勉強させてもらっています」と礼を述べた。
「そんな堅苦しいのは良いから」
和やかに笑う女将さんの顔を見ると癒される。
「そちらの人」
「えっ?私?」
急に竜さんが私に声をかけた。
曇りのない瞳が私を見る。
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