第16話

庭に面した座敷に通されると羽織着物姿の男が一人、煙管をくゆらせて座っていた。



年の頃は30くらいで、細面で神経質そうな、それでいていい男。



店を切り盛りする旦那さんというよりは芸術家っぽい影を感じた。



私を案内した男がその人に耳打ちする。



「ほう……まあ座りな」



男の人が手前の畳を指した。


私が座ると案内した男は部屋の外に出て行った。



「俺は名古屋三四郎。この妓楼の主人だ」



「妓楼?」



「ここのことだよ。吉原のこういうところを妓楼っていうんだ」



「はえ~そうなんですか」

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