第15話

どの店が良いのかわからぬまま歩いていると、ふとある建物の前に目がいった。



一人の女の人が見世の看板を表にしてじっと見ている。



朝靄がかかっている中で佇む姿が凛としていて、そこだけ淡く光っているような……なにか魅かれる。



その人はそのまま店の中へ入っていった。



私はしばし、その場で呆然としていた。



まだ瞼の裏に佇む姿が薄っすら残っている。




「ここにしよう!」私は直感的にそう決めると見世の扉を叩いた。



「すみませーん!開けてください!」



少ししてから扉が開いて中から時代劇で見るような町人姿の男が現れた。



「なんだ?」



「私、ここで働きたいんですけど」



「~……来な」



男は訝しそうに私を見てから顎をしゃくって中へ案内した。

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