第60話

「だって、ニュースじゃ発砲したって……」



「撃ってきた奴はいたが俺にはあたっていない」



両手を広げて見せる邪羅威には傷一つ見当たらなかった。



さっきまでの心配が急激に萎んで、安心が膨らむ。



「それより、また酒を作ってもらおうか」



「う、うん」



私がお酒を作る間、邪羅威はタバコを指に挟んで吸っている。



酒ができると二人でソファーに座りグラスを合わせた。


「そうだ!私、あなたに伝えようと思ったことがあって!」



「なんだ?」



「鯨螺はあなたが殺しに来たことを知ってるの!」



私は昼間の鯨螺たちの集まりを話した。



用心棒を雇ったことも。



「ほお……」



邪羅威が口の端を吊り上げる。




どこか嬉しそう。

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