第61話
「私は裏切ってないから」
グラスを持ったまま邪羅威が私を見る。
「それはいずれわかる」
まるで気にしてないかのように言うと、邪羅威はグラスをテーブルに置いた。
「なんで……殺し屋になったの?」
昨日の晩に湧いた疑問を口にした。
邪羅威は一寸、私を見つめる。
私の目を。
それが自分の奥底まで見られるような気がして、身震いした。
「自由に生きるためだ」
瞬間、お母さんを殺したことを思い出した。
私も殺してる……
自由になるため、命を守るために。
結局、自由にはなれなかったけど。
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