第55話

「相手は邪羅威だ。大丈夫なのか?……うっ!」



発言した鯨螺の仲間の方にアドルが一歩寄った。


両手はポケットに突っ込んだまま。



「フフ…心配か?」



「いや……万一というか……」



ガチャッ!!



「えっ!?」



その場にいた全員が息をのみ言葉を失った。



ポケットに両手を入れていたはずのアドルが拳銃を構えている。



その銃口は正確に、心配を口にした鯨螺の仲間の眉間を捉えていた。



私たち、この場にいる誰もが銃を抜く動作が見えなかった。



「ひゃっ!ひゃーー!!」



銃口を向けられた鯨螺の仲間は悲鳴をあげて身を屈めた。

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