2 大波多莉緒その1
玄関先に飛び出してきた大波多さんは、私服姿だった。
胸元が大胆に開いた薄手のトップスの上に、羽衣っぽいひらひらしたカーディガンを羽織っていて。
下も太ももが剥き出しになるほどのミニスカートという出で立ち。
彼女の金色に輝く髪はよく見るとしっとり濡れていて、シャンプーのいい香りがふわりと漂ってきた。
――ちなみに、いまさらだけどメッセージを送ってきたのは大波多さんである。
そして「いつもの時間」というのはいまこの瞬間のことを指しており、その間に彼女はシャワーを浴びたり、服を着替えたりしていた。
なぜ身だしなみを整える必要があるのかといえば――僕と彼女がセフレという関係に他ならないからだ。
つまりこれから
「……っ」
ついつい視線が彼女の肌色成分全開な胸元や、ピンクに色づいた唇などに向いてしまう。ごくりと生唾をのんでしまう。
と、そんな僕の変化に目ざとく気づいた様子の大波多さんが、ずいっと顔を近づけてきた。
「ケンケンってば、じろじろ見すぎ~。も・し・か・し・て、あーしに見惚れちゃってる?」
「ええっと……大波多さんって相変わらず顔面の主張が強いなぁ、と」
「うーわ、あんまり褒められてる実感が湧かないんだけど。褒めんのヘタクソかよ」
「っ……すごく綺麗だよ。顔面偏差値が適用されるのならきっと、T大にも余裕で入れると思う」
「……ま、及第点ってとこかな」
僕なりの誉め言葉だったのに、大波多さんにはあんまり刺さってないようだ。ため息まで吐かれてしまう始末。
もしも、これがお見合いだったのなら大幅減点されることだろう。身体だけの関係だから、その心配はしなくていいんだけど……。
このまま回れ右しろとか言われたらどうしよう、と一抹の不安に駆られていたら、
「ん」
目を閉じながら、顔を近づけてくるではないか。
唇がぐいっと突きだされるさまは、さながらエサを求める魚のようで。餌づけしてみたいな、なんて思ってしまったり。
でも今の彼女が求めてるのはそれじゃない。そういう茶化しじゃない。
しっかりと意図を汲んだ僕は、自らの顔を近づけていき――。
「んっ……」
大波多さんの唇に、自分の唇を押しつけた。
彼女の柔らかで甘みのあるそれに、ぐにぐにと肌を押しつけていく。お互いの温もりを共有するように、肌を触れさせ合う。
唇に吸いついたり、優しく食んでみたり。たっぷり時間をかけて、学園の三大美姫に数えられる美少女とのキスを堪能していった。
「ん、ちゅ……♡ 今日はちゃんとキスできたじゃん。えらいぞ~」
「だって、しないと家にあげてもらえないから」
「認証コードだからね、入る前にはこうやって本人確認しないと。女子はなにかとセキュリティにはうるさい生き物なわけ」
「そろそろ顔パスさせてほしいんだけど」
「それじゃ挨拶代わりのキスできなくない?」
なにその理由、ただキスしたいだけじゃん。いうて僕もしたいから顔パス発言はすぐさま撤回するとして。
キスをされたことですっかりご機嫌になった様子の大波多さんが、僕の手をとって笑いかけてくる。
「今夜は寝かさないから。覚悟しとくんだぞ~、ケンケンっ♡」
寝るもなにもこっちは日帰りなんだけどね。
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