第55話
「ねえ」
「?」
私が声をかけると優希は振り向いた。
「この前さあ、家の前で会ったとき……」
「ああ…… となりに住んでるんだっけ」
「うん」
「じゃあ毎日うるさいんじゃねえの?」
それが母親とのいさかいを指していることはわかった。
「たまにね」
「たまにか……」
もう優希の顔は私に向いていない。
歩くさきを見ている。
「お金、どうしたの?」
「え?」
優希の足が止まった。
「お金を捨てるとここの前見ちゃったから」
「いらないから」
「えっ?」
優希が私の方を向いた。
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