第30話

悠斗との再会から数日が経った。冬休みも終わりに近づき、学校が始まる日が迫っていた。美咲は、悠斗との楽しい時間を思い出しながら、自分の音楽に対する思いを新たにしていた。


コンクールの日が迫ってくる中、美咲は練習を重ねていた。音楽室での練習は、毎日が新しい発見の連続だった。自分の音楽を追求する中で、さらに多くの曲に触れることができ、毎回の練習がとても刺激的だった。


ある日、学校の帰り道、美咲は友達と一緒に帰っていた。ふと、友達が口を開いた。


「美咲、コンクールに向けて練習頑張ってるみたいだけど、どんな曲を演奏するの?」


美咲は少し照れくさくなりながらも、誇らしげに答えた。「私、最近『ノクターン』を練習してるの。緊張感のある曲だけど、自分の心を表現できると思って」


友達は目を輝かせながら、「それってすごい!美咲の演奏、聴いてみたいな」と言った。その言葉に美咲は少しドキドキしたが、同時にもっと頑張りたいという気持ちが湧いてきた。


その夜、美咲は部屋で一人、悠斗からもらったメッセージを見返していた。「次に会う時は、もっと成長した私でいたいな」と言った自分の言葉が、改めて胸に響いた。


コンクールの日が近づく中、美咲は自分の成長を実感する瞬間が増えてきていた。音楽を通じて自分を表現する楽しさや、努力が形になっていくことに感謝していた。


そして、ついにコンクールの日がやってきた。緊張感が漂う中、美咲は控室で深呼吸をしながら、自分の心を落ち着ける。演奏前の不安や緊張はあったが、悠斗との約束を思い出し、自分を信じることが大切だと改めて思った。


舞台に立った瞬間、観客の目が自分に向けられる。周りの音が消えていく中で、美咲はただ一つのことに集中した。心の奥底から湧き上がる感情を音楽に乗せて、精一杯の演奏を届けることだけを考えた。


演奏が始まり、メロディが流れるにつれて、緊張は少しずつ解けていった。音楽の中に自分を溶け込ませる感覚を味わいながら、心の中に温かい光が広がるのを感じた。観客の顔も見え始め、共にその瞬間を共有していることが伝わってくる。


演奏を終えた瞬間、拍手が響き渡り、美咲はその温かさに包まれた。胸の中に大きな達成感が満ち、全てを出し切った自分を誇りに思った。


控室に戻った美咲は、心からの笑顔を浮かべた。結果はどうであれ、自分の演奏を心から楽しめたことが一番の喜びだった。そう思った瞬間、悠斗の言葉が心に響いてきた。


「頑張ったことが一番だよ」


コンクールが終わった後、美咲は友達や先生たちと共に結果を待つ時間を楽しんでいた。自分の成長を実感し、また次の目標を見つけるために、これからも音楽を続けていくことを心に決めた。


これまでの努力が実を結ぶ瞬間が待ち遠しい。美咲は自分の未来に期待しながら、次の挑戦へと踏み出す準備を整えていた。


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