第26話
季節はゆっくりと進み、秋の気配が色濃くなってきた。木々の葉は赤や黄色に染まり、涼やかな風が学校のグラウンドを吹き抜けていく。文化祭が終わり、日々の生活が少しずつ平穏を取り戻していく中、美咲はどこか物足りなさを感じていた。
ある日の放課後、美咲は校庭で悠斗との思い出をぼんやりと振り返っていた。文化祭のステージ、音楽室での練習、そしてお互いに励まし合ったメッセージのやりとり。それぞれの瞬間が、今の自分を支えていることを強く実感していた。
「悠斗に、また会いたいな…」
ふとつぶやいたその言葉は、自分の思いを確認するかのように静かに響いた。離れているからこそ、お互いが頑張り続けられる――そう思っていたものの、やはり悠斗に会いたい気持ちは募るばかりだった。
その夜、美咲は再び悠斗にメッセージを送ることにした。
「最近、秋が深まってきて、なんだか寂しい気持ちになっちゃう。悠斗はどうしてる?」
送信ボタンを押した瞬間、すぐに返信が返ってきた。
「わかるよ。俺もたまにそんな気持ちになる。でも、美咲と一緒に頑張ってきたことを思い出すと、なんとかやる気が湧いてくるんだ」
美咲はそのメッセージを読みながら、ふと思いついたことがあった。
「そうだ!今度の冬休みに、一緒に会えたらいいな。どこかで待ち合わせして、お互いのこと話し合おうよ」
少しドキドキしながら送ったその提案に、悠斗からの返事を待つ。しばらくしてから、彼からの返信が来た。
「冬休みか…いいね!それまでに、俺ももっと成長して、美咲に会えるように頑張るよ!」
その言葉に、美咲の心は暖かくなった。お互いに離れているからこそ、こうして会う約束ができることが嬉しかった。再会の日が待ち遠しく、彼女の心に新たな目標ができた。
次の日から、美咲はさらに勉強や音楽の練習に打ち込むようになった。悠斗に負けないように、自分ももっと成長して、再会したときに自信を持って笑顔で会える自分でいたいと思ったからだ。
冬の訪れとともに、彼女の胸には期待と決意が交差していた。再会の日まで、美咲は自分の限界を越えて、新しい自分を見つける旅を続けると心に誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます